無条件の愛

四神一鏡

無条件の愛

彼女はいつだって僕を愛してくれた。


僕が嬉しい時も、悲しい時も、楽しい時も、辛い時も、いつだって笑顔でそばにいてくれた。


僕が受験に失敗した時、彼女は微笑みながら僕を慰めてくれた。また来年があるよ、私もサポート頑張るから。一緒に頑張ろ?って。

翌年、僕が合格した時、彼女はまるで自分のことのように喜んでくれた。


僕が就活に悩んでいる時、彼女は微笑みながら僕を励ましてくれた。焦らなくて良いんだよ。私も応援してるから。くじけずに頑張ろ?って。

そのおかげか、僕は大手と言われる企業に内定をもらうことができた。


彼女はいつだって僕のそばにいてくれた。

僕を支えてくれた。

そんな彼女のことを、僕はいつの間にか好きになっていた。

ある日、僕は勇気を振り絞って彼女に告白した。彼女は涙を流しながら喜んで、僕の告白を受け入れてくれた。


それからしばらくして僕たちは結婚した。彼女と共に幸せな家庭を作ろうと誓った。何があっても彼女を守ると心に決めた。


結婚してからも、彼女は変わらず僕を支えてくれた。僕たちは幸せな家庭を築くことができた。


ある日、僕はリストラされた。不景気に伴った理不尽な解雇だった。

先の見えない不安に襲われる僕を彼女は微笑みながら宥めてくれた。彼女は専業主婦だったので、僕が職を失ったいま、収入源が断たれて彼女自身も不安だったと思う。それでも彼女はそんな感情をおくびにも出さずに、微笑みながら宥めてくれた。


そんな彼女のことを、こんな時でも無条件に僕を愛してくれる彼女のことを ──────── 僕は怖いと思った。


僕はそれから、貯金のほとんどをパチンコに費やし、1日のほとんどをパチンコで過ごした。こんなに落ちぶれた僕を、彼女はいつもと変わらず愛してくれた。大丈夫だよと言ってくれた。自分の親から借金してまで僕を支えてくれた。

その愛が、僕に重くのしかかった。いっそなじってくれた方が楽だと思った。


ある日、僕は彼女に離婚届を差し出した。もう僕は彼女との生活に耐えられなかった。それでも彼女は微笑みながら僕を窘めた。これからも2人で暮らしていこうと言った。


僕にはもう彼女がわからなかった。



彼女はいつだって僕を愛してくれた。僕も彼女を愛していた。でも、僕は彼女が怖かった。無条件に僕のことを愛してくれる彼女のことが理解出来なかった。わからないものは怖い。だってわからないから。

彼女は僕を一生愛してくれるだろう。そんな彼女を僕は一生理解できないだろう。


それでも僕は生きていく。彼女と共に、今日という日を。


「・・・おはよう」


彼女は微笑んでいた。

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無条件の愛 四神一鏡 @shishinikkyo

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