もしやロビンソン?

 昼休みになり、売店へ向かう安永としげる。今日は一応ロビンソン亭のマグロカツサンドの特売日だ。


「それにしても驚いたな。まさかのりさんが教師になるなんて」

「本当そうだな、ヤスケン。でもな、残念なことが一つあるんだよな」

「なにさ、リーダー?」

「今日特売日じゃない。今まではのりさんが来てたわけじゃない。

 でものりさんが先生になると、必然的に来ちゃうじゃない、あの男が」

「ああ、ロビンソンがな……」


 少し落胆した二人が売店に着くと、意外な光景が。

 なんとマグロカツサンドを売っているのは、本日臨時教師をして赴任した藤田のりだった。


「あれ、のりさん?なにやってんの?」

「ああ、拳ちゃん、いらっしゃい」

「いらっしゃいって、あぁた今日からうちの高校の先生になったんじゃないの?」

「それはそれ。これはこれっていうじゃない?まあ、これからよろしくね」

「はい、よろしく」

「のりさん、数学ですよね。ヤスケン君、数学苦手なんですよ。ちょっと教えてやってくださいよ」

「そうなの?じゃあ、ビシバシ鍛えてあげるわよ」

「余計なこと言うなよ、リーダー」


 マグロカツサンドを買う安永としげる。するとのりさんが話を切り出した。


「拳ちゃん、もうすぐ誕生日だよね。ケーキでも作ってあげようか?」

「本当ですか?じゃ俺、ずんだケーキがいいな」

「なんだそれ、ヤスケン?」

「昔、仙台に旅行に行った時に食べたんだけどさ、なまらうまかったのよ」

「わかったよ、考えておくね」

「お、よろしくお願いします」


 3人の談笑を遠くから見つめる影が一つ。


「ずんだケーキね」


 にやりと笑った人物の手には大きなペットボトルが握られていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る