マーチングバンドの余韻

 夕方、文化祭も無事終わり、モモと安永は一緒に駅に向かっていた。

 二人とも黙って歩いている。モモがちらちらと安永の左手を見る。

 わざとらしく安永の手に向かって手を伸ばした瞬間、安永が声をかけた。


「モモッチ、とうとう終わっちゃったね」


 安永から急に声をかけられ、驚くモモ。


「そうだね。終わっちゃったね、ヤスケン」

「きっかけはかなり強引な誘いだったけど、この3ヶ月間楽しかったよ」

「そっか、もとはあたしの強引な誘いだったね。

 でも楽しんでくれてこちらとしてもうれしいよ。

 あたしも楽しかったけど、終わっちゃうと気が抜けちゃうな。

 なんか何もやる気しないって感じ」

「やる気しないって、まだまだ今年もあと2カ月あるんだよ」


 安永が苦笑いする。


「でも、大きなイベントが終わっちゃうと、気が抜けるんだよね。

 なんかイベントがあるといいんだけど」

「月末、俺の誕生日だけど」

「ヤスケン、どうしたの?いきなり誕生日を言っちゃってさ」

「いや、イベント作ってあげようと思って」


 安永の困った顔がかわいらしく見えたモモ。


「ありがと、ヤスケン。じゃ誕生日プレゼント用意するから。楽しみにしてね」

「お、サンキュ。楽しみにしてるよ」


 二人はそのまま駅に向かった。自然と二人の手が握られていた。

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