綱引き

 入場門には3-Dの面々が待機していた。全員気合いが入っている様子だ。


「次の競技は綱引きです。選手は入場してください。第1回戦は1-A対3-Dです」


 1-Aと3-Dの生徒たちが入場していく。両チームが綱に沿って並んでいく。

 3-D側では安永拳と三日月モモが並んで立っている。綱を握ろうとした瞬間、


「痛い!ヤスケン、手握らないでよ」

「あ、ごめん」


 安永が慌てて綱を握る。


 一方1-A側では、ものすごい形相をした女生徒が一人。


「何よ、安永先輩いちゃついちゃって……うぬぬぬぬ」


 菊地萌子の握る手が強くなる。


「あいたたた。菊ちゃん、それ綱じゃなくておれの手だって……」


 痛みでものすごい形相の田勢。


「もう、全く邪魔ね」


 田勢の手を振り払って、綱を握りなおす菊ちゃん。


「では、はじめ!」


 スタートの笛が鳴る。両チームとの懸命に綱を引く。


「オーエス、オーエス!」


 最後尾のしげるが掛け声をあげながら、力強く綱を引いていく。

 次第に3-Dのほうが優勢になる。


 ピピーッ!


 決着がついたようだ。喜ぶ3-Dの面々。

 喜びのあまり安永とモモが抱きあってしまう。

 その様子を見た菊ちゃんは怒りに震えていた。


「菊ちゃん、惜しかったね」


 ねぎらう田勢。


「負けたのはあなたのせいよ!」


 田勢にやつあたりする菊ちゃん。

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