マーチングバンドとは?

 なっちゃん先輩の返答にモモは不安になる。15分ほどして、一行はとある体育館に到着した。


「モモ、着いたよ」

「はい」

「これ、持つの手伝って」

「はい」


 モモは何もわからぬままバンから降り、荷物を持つのを手伝わされ、体育館の中に入った。

 すると、驚きの光景がモモの目の前に広がっていたのだ。

 何十人もの人間がドラムやトランペットを持っている。中には大きな旗を持っている人もいる。

 なっちゃん先輩たちはその一角で荷物の中身である木琴を組み立てていた。


「先輩・・・これってマーチングバンドですか?わたし、本物見るの初めてです」

「どう、モモ?かっこいいでしょ」


 モモは初めて見たマーチングバンドに興奮していた。なっちゃん先輩はメガネをかけた長身の男性に声をかける。


「おはようございます、ルギーさん。こちら、この前話した後輩のモモです」

「おお、キミがなっちゃんの後輩のモモちゃんか。イカしてるねぇ」

「イカしてる?」


 平成生まれのモモはルギーの言った「イカしてる」の意味がわからず、首をかしげた。


「おっと、自己紹介を忘れてた。マーチングバンドのドラムメジャー、つまり指揮者のルギーです。今日はうちのイカした演奏に感動しちゃってよ」


『軽そうな人だな。指揮者って玉木みたいに神経質な人ばかりだと思ってた』


 モモがルギーに対してそんな印象を思っていたら、小柄な女性が近寄ってきた。


「こら、ルギー!若い子に「イカした」なんて言ってもわからないよ。あ、モモちゃんお久しぶり」


 ルギーにツッコミをいれたのは、安永拳の叔母、ナンシーだった。


「あ、お久しぶりです。たしかヤスケンのおばさん」

「え?拳ちゃんって「ヤスケン」って呼ばれてるの?ぐふふふ・・・」


 ナンシーは不敵な笑みを浮かべた。


「じゃ、各パートで20分間音合わせやった後、全体で一通り合わせるよ」


 ルギーの号令にあわせて、各パートの練習が始まった。モモはナンシーと一緒に片隅で練習を見学している。


「あの、ルギーさんとナンシーさんは付き合っているんですか?」


 モモは不意に聞いてみた。


「ん?付き合っているっていうか、養ってあげてるって感じかな?」

「え?」

「まあ、大人の事情ってヤツよ。あんまり気にしないで」


 ナンシーの言葉に逆に二人の関係が気になってしまったモモであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る