マナの約束〜one and only〜

白黒

プロローグ

 世界は生あるものを愛す。

 植物も、動物も、人間も。全ての者を等しく愛す。


 大地が渇き枯れかけた世界に、大きな雨雲を。

 凶暴な野獣が増殖した世界に、一頭の王を。

 情を無くし殺し合う者達の世界に、一際よく泣く赤ん坊を。


 そこに生きる者たちが幸福に向かうよう、世界は願い、回る。

 意思ある生は、ときにそんな世界を潤し、ときに破滅を招いた。

 その中でも本能と理性を併せ持ち、知性に優れた生……人間は、どの生よりも多くの影響を世界にもたらしてきた。


 本能があるからこそ生まれた愛情と憎悪。

 理性があるからこそ生まれた尊敬と野心。


 人間という生き物は、心と呼ばれるそれに最も恵まれた生き物である。

 美しく、醜く、強く、弱い生き物だ。

 しかし、だからこそ、その生は愛おしいものだ。

 人間の持つ愛は、何かを生みもすれば、壊しもする。


 彼にとっての愛とは、支配。

 彼にとっての愛とは、自由。


 彼の愛が起こした悲劇を。

 彼の愛が起こした奇跡を。


 そして、彼女にとっての愛を。世界は見届けるだろう。


 愛する彼等に幸福を。


 世界は今も、いつまでも。願い、回り続けるだろう。

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