第六話 林間学校≒ダンジョン④ ~奈落! 誰が作った落とし穴~
はい、というわけでやってきました森の中。
今日は鹿か猪を狙いたいと思います。本当はちゃんとした道具があれば良い感じのくくり罠とか作れるのですが、スコップしか無いので落とし穴を作ります。
主にそこの二人が。
「鹿か猪で大丈夫? 臭みは香辛料で消せると思うけど」
「美味いなら許す」
「任せる」
いや良かった、大変なんだよね落とし穴掘るの。俺は蓋を作ってようか。
「なら早速だけど……うん、あの小川の近くに二人には落とし穴作ってもらおうかな」
秋口ならドングリなんかが落ちている木の近くが一番良いのだが、ここは水場の近くに仕掛けよう。
「結構大きいやつ?」
「まぁ、ね……這い上がれないように壺っぽくしてくれれば良いんだ」
「フッ、造作もない」
スコップを肩に担ぎ頼もしい台詞を口にしてくれるエミリー。
これはあれだな、落とし穴を作るのがどれだけ重労働か知らないんだろうな。まぁ存分に重労働をしてもらおう、そっちの方がカレーだって美味しいさ。
「待った」
だがスコップを杖にして、そっぽを向くファリンがいる。
落とし穴掘るの大変だってばれたかな?
「ファリンどうしたの?」
「……あれ見て」
あれ。
彼女が指さす先にあったのは、一枚の立て看板。
『この下、パンスーロ牛生息地』
なんて書いてある。
下ってなんだ、立て看板が地面に刺さってるんだぞ意味がないじゃないかこんなの。
「何だこれ……っていうかパンスーロ牛って何さ」
「パ、パンスーロ牛を知らないだと!?」
まさしく馬鹿を見る目をして驚くエミリー。そんな一般的な牛なのかな。
「パンスーロ牛、それはまさしく牛肉界の革命児……パンスーロ牛が発見される五十年程前まで牛肉は家畜化された豚肉よりも臭みが強く一段劣るものとされてきた。しかしパンスーロ牛の持つ独特の『サシ』とよばれる上品な甘さを持つ斑状の脂肪と臭みはおろか焼けば香ばしさが漂う赤身の存在によりその評価がひっくり返った。それから今日に至るまで牛肉が肉の中でも高級とされるのはひとえにパンスーロ牛の存在があったからであり市場には多くの偽物が出回って」
「すごい肉なんだ」
早口で解説ありがとうファリン今度は俺が驚いちゃったよ。
「すごいなんてものじゃない、アルフレッドはもっと勉強した方がいい」
いつも授業中という名の自習時間に寝てばっかりの人に怒られるという全く新しいタイプの説教であった。
「なればこそ! 我らが取るべき道は一つ! いざゆかんロードトゥザビーフカレー!」
なんか叫びだしたエミリーがかっこいいポーズを逐一叫んでから。
「ぅぉぉぉぉおおおおおおっ!」
ものすごい速さで走り出すエミリー、もちろん立て看板に向かってだ。
「いやでも、怪しすぎて何かの罠だと思わない?」
例えばそう、俺達が今作ろうとしている落とし穴とか。
「うわあああああああぁぁぁぁぁ……」
ストン、と小気味の良い音を立てて落とし穴に落ちていくエミリー。
遠くなっていく声は、その穴の深さを物語る。
「落とし穴、もうあったね」
ふとそんな事を口につけば、なぜかファリンが自慢げに鼻を鳴らした。
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