第六話 林間学校≒ダンジョン② ~結局! 予定調和の事件発生~

 さらに馬車で走るほど一時間と少し。


 途中車内で弁当を食べ、何やかんやでついた先は林間学校に相応しい森に囲まれた芝の原っぱ。


 一応井戸と小さな小屋はあるが殆ど人工物らしきものはない。




 つまるところ俺の田舎と大して変わらない景色が広がっていた。




「よしついたなぁっ……たま痛ぇ。夜はカレーだ、適当にテントとか貼ってカレー出来たら起こせよ以上だ」


 それだけ言い残して先生はまた馬車の中に戻り、学園長を枕にして眠りについた。


 もはや教育者としての面影はないただキャンプで遊びに来たけど酒飲んで潰れただけの成人女性である。


 休日かな。


「とりあえず……テントの準備しようか」


 まぁここまで来れば仕方ない、林間学校に挑むとしよう。カレーの辛さはどうでもいいとして寝る場所がないのは困るな。


「いやその前に薪を集めた方が良いんじゃないかな? やはり火を起こして困ることはないと思うよ」

「あ、わたし料理なら得意ですよ」

「クックックッ、リンゴと蜂蜜が織りなすハーモニーに震えるがいい……!」

「寝袋どこ」


 各々の意見を口にする召喚科の面々達。


 俺はとりあえず黙ることにしたが、ああでもないこうでもないと互いの意見を主張し合う。


 どうしようかな、一人じゃ出来ない作業いくつかあるだろうし。


「おらっ……テメェら! そんなバラバラに行動してどうする!」

「エル」


 と思ったら、いつの間にか起きてたエルがこれまた手頃な木の棒を掴んでそんな事を言い出した。


「エル? 違うな、今のオレはそう……監督だ!」


 また知らない役職出てきた。


「はい監督!」


 敬礼するクラスメイト達。みんな元気だなぁ。


「よしまずは晩飯の下準備はシバとディアナだな。この人数の調理をするんだ、男手はあった方が楽だな……で、ファリンとエミリーはテントの設営だな。ワンポールだからそこまで難しくないはずだ」


 テキパキと指示をするエルに皆それぞれ従い始める。


 こういう指揮を見てると魔王って事が嘘じゃないんだなって思ってしまう。


「いや、俺は?」


 そういえば名前呼ばれてないなと尋ねれば、エルが良い笑顔を返す。


 あとどこから小さなボールを一つ取り出し、木の枝でそれを打つ。


「オレと遊ぶぞ!」

「……テントの設営手伝いまーす」


 流石にそれは後が怖いので他の人手伝おうっと。


「アルウウウウウウウッ!」

「監督? 遊んでないで薪拾ってきて貰えますか?」


 ついでに役割が決まってない監督の肩をディアナが掴む。


 良かった良かった、これでサボりは一人もいないな。






「いくよー? 1、2の……さーんっ!」


 掛け声を上げながら、テント中央のポールを立てる。


 あとはテント本体を杭とロープで固定すれば完成だ。


「思ったより広い、これなら寝れる」

「フッ、今日の褥としては申し分ないだろう」


 手伝ってくれていたファリンとエミリーが中に入って感想を漏らす。


 自分としてはそこまで物珍しいものじゃ無かったが、この二人にとっては違うのだろう。


 それなりに広くそこそこ快適なのだが、まぁ自然の中に布を立てているだけなので。


「あっ毛虫だ」


 テントの中にいた虫を摘まんで外に放り投げる。


 が、テント内に響く甲高い声。


「ヒイイッ!?」


 どっちだろう叫んだの、まぁファリンでは無さそうだけど。


「二人とも虫苦手?」

「私はそこまで苦手じゃない。薬の調合で使ったことある」

「む、虫は古来より穢れた亡者達の魂の輪廻の最先端と決まっているではないか……むしろアルフレッドはよくそんな汚らわしいものを素手で」

「田舎出身だからなぁ」

「どの辺?」


 エミリーの質問に答えれば、以外な事にファリンが質問を重ねてきた。


「ディアックって所だけど知らないよね」

「……知らなかった」

「でしょ」


 まぁ人より羊の方が多いような場所だからね、テントが物珍しい人は普通知らないよね。


「そうじゃない、アルフレッドが冗談言う性格だって」


 首を横に振るファリン。


 冗談? 


 そんな事を言った覚えは無さそうだけど、ちょっと不思議系なのかなファリンって。




「うわああああああああああああああああああっ!」




 と、今度は外から悲鳴が聞こえてくる。この声は聴き間違いがない、エルですね何してんの。

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