第3話 異世界。そして高揚。

目が覚めると、悠夢は澄み渡る川のほとりで仰向けになっていた。

痛みなどの違和感は全くない。


「おかしい……」


目覚て秒で結論がでる。

そう、悲しい事なのだが、引きこもりを極めた俺がこんな綺麗な川の辺にいるわけがないのだ。



空がいつもより近くに見える。普段外に出ないからだろうか……いや、明らかに近い。


いつもと違い過ぎる空間に電光石火の様な凄まじいスピードで立ち上がり、鬼の形相の如く辺りを見渡す。周りからは怪人を見たかの様な視線が刺さりまくる。

しかしそんな視線を気にする暇も無かった。


「…じゅ、獣人…?!」


栗色の可愛げのある耳と尾…紛れもなく異世界の大御所種族『獣人』だ。

獣人だけじゃない。ドワーフ リザードマン ジャイアント そしてエルフ……。


今までラノベや異世界アニメでしか見たことのない種族が沢山こちらを見ている。

悠夢はバカではあるがに関しては昔から長けていた。


「…俺は異世界に…“転移”したんだ……!!」


異世界に転移したいと心から願っていた彼は、焦りなどのマイナス感情は一切無かった。感動、興奮、期待、高揚、希望、未来などの超プラス感情。


「よっっっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


ドラゴンの咆哮にも負けない凄まじい声を上げながら、周りの視線など全く気にせず彼は街のある方へ走り出した。









街の中に入って行くと、そこは沢山の種族で賑わっていた。


「うわぁ!すっげぇ!!」


地球で言うサナアの旧市街の様な街並みが中央にそびえ立つ。街は巨大樹を囲うように連なり、武器や体力回復薬ポーションは異世界感を更に彷彿とさせる。



「げっ、ハイ・ポーションで五◯◯Fフォグって高すぎだろ…さっき見た店三◯◯フォ……」


足が止まる。



「………まて、何故字が読める。」



頭に入りすぎて全く気づかなかったが、何故 ろくに英語も読めない自分が、見たことのないまさの様な文字を違和感無くすらすら読めるのか……



「やはり、異世界ストーリーの醍醐味、“チート級の能力を元々持っている”と言う定義はやはり本当なんだ!」


こう考えると、話がしっかりまとまる。


世界の危機とかで、何か超強い才能スキルのあるこのニートおれを転移させ、超かわいい美女戦士達と協力しながら魔王か何かをぶっ倒す。そして待っているのは世界の誰もが羨むであろうスーパーハーレムハッピーエンド。だから転移特典ボーナス的なものでこの世界の言語を完璧に読める。

うん。我ながら素晴らしい仮説を立てれたと思う。


「…と、なると__グフフ」


悠夢は不気味な笑い声とともに、街を後にするのであった。








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