欠如転生

黒豚@

第1話 転生

「これは簡単な面談だ。お前の地獄みたいな世界の就活よりかは余程楽だろうからリラックスして聞け」

謎の風格がある青年にそう言われる。

俺は状況が読み込めず、辺りを見渡した。

木枠の窓、コンクリートではなさそうな壁。

明らかに時代が古い一室だ。

「状況はまあ後で分かる。私は神だ。お前は死んだ。死んだから別世界に生まれ変わったり転移したりする権利がある。」

とりあえず自称神の方へ顔を向ける。

神は一枚の紙を持っていた。履歴書か何かだろうか。

「お前らの世界では所謂『異世界転生』が流行っているようだが、残念ながら記憶を持って転生できるのは私の世界くらいでな」

異世界転生、知った言葉だ。ネット文化に触れたことのある人間なら大半が知っているだろう。

「私の世界はお前の世界と大して変わらん、一応の魔法はあるがお前の世界で使える技術があれば全て再現できる。」

魔法、俺の世界の中高生にとっては憧れの存在だろう。科学で実現できるというのは夢のない話な気もする。

「お前が転生したとして、大した力は与えられない。仮に英雄になろうものなら元から英雄の素質があった人物であっただけで、美女をはべらせることができるなら元の話術が優れていたというだけだ。死因の隠匿が理由で多少記憶の抜け落ちはあるだろうが、お前がひきこもりだったら異世界でもひきこもって餓死するのが宿命となろう。」

俺の思い返せるだけの記憶を総動員してみる。とりあえず高校生だったことは思い出せた。

「生まれ変わるなら一から教育を受けられるが、色々な縛りが付きまとう事になる。身体そのままに生きていくなら、明日から生きるための路銀を稼がねばならない。そこらへんはお前次第だ。」

自称神は持っていた紙を放り投げた。

「まず初めに三択だ。ここまでの説明で、一この世界でもう一度赤ん坊から始める、二お前が今持っている体で始める、三別の世界にする。さあ早く選べ」

俺はとりあえず今やるべきだろうと思う事を選択した。

「これ以上の情報は出せないのですか?」

ここまでの情報には、異世界の現状が一切出されていない。

戦時中の国で赤ん坊になろうが生きていける確率はとてつもなく低いだろう。

「……ほう?情報か。聞いたことは褒めてやるが平等性に欠けるのでな。これ以上の情報はやれん。ただお前がいましている心配のようにはならないと保証しよう。」

「分かりました。二のこの身体で転生することにします。」

一は最初から論外だ。この一室が転生先の異世界とするなら、若年の死亡率は高い可能性がある。平等性を重視する神なら俺だけ例外というのもありえないだろう。

他の世界も考えたが、転生可能なのがこの世界だけな以上は他を選ぶと記憶を失う可能性が高い。俺だってまだ死にたくないんだ。

「じゃあそのベットで寝てて、起きたらそこら辺の町で突っ立ってるスタートすると思うから。数日間寝れない可能性もあるししっかり寝ときなよ」

そう言うと神は席を立った。

「受け答え特に問題なかったし合格ね、明日からこの世界で頑張って生きてね」

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欠如転生 黒豚@ @kurobuta128

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