ver.5.0.15.1 鷲尾ユリハ
「今日はお集まりいただきありがとうございます。里見O阪府知事、鷲尾総理大臣がいらっしゃいました。皆さま、拍手でお迎えください」
壇上の司会者が拍手し始めると、他の者も倣って拍手する。
T天閣の上にある広いパーティー会場。
元展望台だった場所が美しく華やかな装飾にされ、白い丸テーブルがいくつも並んでいる。
村雨は周囲に溶け込むため、拍手の音に合わせて手を叩いた。
「では、まずは里見知事。開会の挨拶を」
「うむ」
壇上のマイクの前に、青年が立つ。
この男こそ、O阪府知事であり、O阪ユートピア構想を立案した人物だ。
側には、豪華な椅子に座った鷲尾総理大臣がいる。
鷲尾ユリハ、日本初女性首相。
T京都知事を経て、四年前の選挙に勝ち抜いた女性。
世界からも注目されている。
里見が喋り始めてすぐ、村雨がスマホの画面をタッチした。
「えぇ、本日は……」
天井裏に仕掛けた爆弾が作動し、小さな爆発を起こした。
天井の一部が崩壊する。
一瞬にして、テーブル、床、窓ガラスが壊され、小さな炎が広がる。
カーペットに移った炎はゆらゆらと揺れていた。
しばらく間を置いて、客が悲鳴を発した。
総理と府知事の周りを、SPがさっさと囲んだ。
村雨はポケットから、愛用の拳銃を引き抜くとSPの頭部に狙いを定めて、引き金を絞った。
銃声が響き渡る。
SPの側頭部が破裂すると赤い液体が飛び出し、府知事の衣服を汚した。
驚愕する叫び声を聞かされるのと同時に、SPもさすがと言わんばかりに冷静な対応をしている。
すぐさま会場は、銃弾が飛び交う戦場へと染まってしまった。
村雨は柱に身を隠し、SPに弾丸をお見舞いする。
SPの数に驚いた村雨は、感嘆の息を漏らす。
「こんなに用意していたのか、SPを。これらの武器だけじゃ足りないな」
アメリカ軍で鍛えた技を披露するか。
村雨は素早く行動した。
まず、弾倉が空になった拳銃を捨てて、コートのボタンを外す。
コートの内側には、びっしりと銃器と弾薬を張り付けていた。
銃器は仕入れたID銃を、三上ハルトに洗浄してもらったものだった。
つまり、ノンID銃のため、誰でも撃てるようになっている。
拳銃、突撃銃含め、様々な種類のノンID銃が用意されていた。
そんな村雨に、ニックネームを付けるなら、歩く武器庫が相応しい。
「これでは、武器商人だな。さてと、姿ぐらいは見せるか……!」
両手に拳銃を握って、遮蔽物から飛び出した。
次々と、露出している頭を撃ち抜いていく。
が、数は減っていないように思える。
そうか、下にも配備されていたのか。
それぐらいの数、既に体験済みだ。
日本が誇る警察官、その腕前を見せてもらおうか。
村雨はとにかく、引き金を引いた。
狙いが逸れ、胴体に当たっても効果は薄い。
防弾チョッキか。
構わない、隙を見て頭部を潰す。
引き金を引く、撃鉄と撃針が作動、爆発エネルギーで弾丸を発射。
スライドが反動で後退し、空薬莢を排出。
カランと音を立てて、床に転がる。
撃鉄が起きて、スプリングの力で戻ったスライドと共に弾倉の次弾が薬室に送られる。
こうして、次々と弾丸を発射していった。
うむ、命中率が少し悪いな。
両手の拳銃がホールドオープンし、使用者に弾切れを訴える。
じゃあ、今度はショットガンで挑むか。
ポンプアクションの散弾銃は村雨カスタムだ。
何とか輸入できた銃を、三上がノンID銃に変え、村雨が改造した。
弾丸一発一発に想いを込める。
「喧嘩じゃない、本気の戦闘だ」
呟いてすぐ、接近してきた不運なSPの懐に潜り込んで、腹に一発散弾をぶち込む。
そして、斃れる死体を盾に、味方が撃てないSPを射殺していく。
で、近接で戦うことを決めたSPと格闘を交える。
散弾銃を縦に構えて、腕の攻撃を止め、隙だらけの相手に蹴りを入れた。
背後からこっそりと近づいてきた卑怯者の頭に銃身を叩きこんで、頭を床にこすりつけたところで撃つ。
床に、べっとりと血糊が付着する。
「おいおい、接近戦でも勝てないのか」
村雨は呆れながら笑う。
連続して襲ってくるSPに反撃を決め、怯んだ人体に大型ナイフを突き立てる。
ショットガンも弾倉全て使い切り、今度はアサルトライフルに持ち替える。
と、その時、胸に風穴をあけられた。
銃口から硝煙が昇っているのを横目で見る。
そのSPは、安堵でニヤケていた。
これまで躱され続けたのだ。
笑みがこぼれるのも理解できる。
銃弾の勢いに押され、後方に倒れそうになる村雨。
それを足で踏ん張り、上体を跳ね起こして、銃弾を連発する。
笑っていたSPはあっという間に蜂の巣になって、そのまま倒れ伏した。
「残念だったな。私の体は、少し細工がしてある」
「なんで倒れないんだよ! どうなってんだ! あれは人間か!」
撃たれても平気な村雨を目の当たりにして、府知事が騒いでいた。
痛覚遮断薬。
どこかの組織が開発した軍用の麻酔技術だ。
銃で撃たれようが、ナイフで刺されようが痛みを感じない。
殺したいのなら、徹底的に殺すしかない。
府知事の口を閉じさせるために、威嚇の銃声を響かせる。
ヒッ、と短く驚かせて黙らせた後、次のSPを殺す。
客は皆、一つしかないエレベーターに駆け込んでいる。
そのため、奥の廊下が人で埋め尽くされていた。
奴らは関係ない。
無駄に殺す必要もない。
柱の陰に隠れると、足に柔らかい感触があった。
倒れた柱から人の頭が突出している。
既に潰されて、死んでいるみたいだ。
すまない、一般人を巻き込むつもりはなかった。
私もすぐ、そっちにいって謝るよ。
弾丸に穿たれた柱の破片が散る。
撃ち込まれた方角に、銃口を向けて連射すると静かになった。
ようやく、SPは全滅したか。
おもむろに立ち上がって、SPの死屍累々に閉じ込められた総理大臣と府知事に近寄る。
支離滅裂なことをわめく府知事の口に、アサルトライフルの銃口を突っ込んだ。
「静かにしてろ。殺しはしない。話をしにきたんだ」
「ふぁ、ふぁなひ?」
喉まで入った銃口を抜くと、里見府知事は勢いよく噎せ返す。
鷲尾総理大臣だけは冷静に、村雨を睨んでいた。
これには、村雨も少し動揺する。
「肝が据わっているな」
「話を聞いたら、解放してくれるのかしら」
「ああ、運が良ければな」
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