鋼の乙女達 ~少女戦略ゲー談話~
竹槍
第一の世界線 最初は普通にいきましょう
その一 全ての始まり
七月二十六日午前九時
「よーし全員いるな、始めるぞー」
LINEのグループ通話によく通るアルトがこだまする。
このグループは、
夏休みに入った女子高生がLINEの通話機能で語り合う。なんとも乙女らしい光景だが、彼女らがそれぞれ相対しているパソコンの画面は、はっきり言って乙女らしさの欠片もなかった。
任意の国家を率いて第二次大戦を生き抜くというゲーム内容で、一般層への知名度は低いが、歴史好きやらシミュレーション好きやらストラテジー好きなどへの知名度は抜群である。
彼女達は、そんな知る人ぞ知るコアなゲームをプレイするべくこうして集まったというわけだ
「みんな国どうする?」
「取りあえず初めてだし普通にやった方がいいんじゃない」
実は彼女達、シングルプレイならある程度やっているものの、一堂に会してのマルチプレイは初めてなのだ
「じゃあ私ドイツでいいですか?」
最初にそう名乗り出たのは小野楓華である。機甲師団による電撃戦を得意とする楓華にとって、同じく電撃戦を得意とするドイツは相性がいいのだ。なんとしてもやりたかったに相違ない。
「みんないいか? なら楓華はドイツで決定」
「なら私はハンガリーで」
言うや否や白石美咲がそう志願する。ゲーム開始時点こそ弱小国であるものの、イベントを進めることでかのオーストリア・ハンガリー帝国の再興が可能となっている浪漫溢れる国家だ。中小国相手など局所的な戦闘は得意なものの、戦線が広くなると苦戦し始める美咲ならではの選択と言えよう。
ドイツとの同盟が容易なため戦線の大半をそちらに任せつつ、自軍は局地的な攻勢などで戦線に穴を空けることに集中するといったプレイも可能なのだ。
「前の戦のやり直しってか。私はイギリスいこうかな」
そして二人の意図を酌み取った春本勇がイギリスの担当を表明。京香以外のメンバーより一歳年上ということも相まってやや遠慮をしていたものの、響の決定を待てなかったあたり、己の欲望を抑えきれなかったようである。
もっとも、彼女の実力を余すことなく発揮できるのは、石油とゴム資源とボーキサイトを大量に確保できる上に高い工業力を持つ国のみなので、選択肢は大きく絞られる。
しかしその点、七大国の一角に数えられる国力を持ち、上記三種の資源を植民地から大量に購入と言う名の徴収が可能なイギリスはうってつけと言える。
「勇先輩のイギリスプレイとか嫌な予感しかしない……あ、私日本やるんで東南アジアとインドは貰ってきますね」
そして響はイギリスもとい勇に、早速喧嘩を売りながら日本を選択した。彼女の異常なまでの海軍愛を鑑みればなんら不思議な選択ではない。
「じゃあ最後に私はソ連で行きまーす」
同い年の勇と違いきちんと後輩が選び終わるまで我慢できた京香はソビエト連邦を選択した。大粛清で強烈なデバフが掛かるものの、逆に言えばそれくらい強烈なデバフを掛けなければバランスが取れないような強豪国家ということだ。
「さてプレイ国家も決まったことだし、戦争を始めますか」
「いえーい」
「うぇーい」
「ひゅーひゅー」
「
かくして、勇の物騒極まりない発言でゲームは開始された。これからいったいどうなることか。それは誰にもわからない。わかってたまるか。
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