旅立ちの前に

勝利だギューちゃん

第1話

町の高台にいた。

辺りはすっかり日が暮れて、いつもなら家に灯りがつく。


でも、今日はつかない。

今日だけではない。

明日も

明後日も・・・


もう灯がつく事はないのだ。


「君もここに来てたんだね」

ふるかえると、クラスメイトの女子がいた。


自由奔放で、天真爛漫で、誰からも好かれていた。

僕とは、正反対だった。


「うん、最後は好きな場所でね・・・」

「私も、気が合うね」

その笑顔には、断固たる決意があった。


「後悔しないの?」

彼女に訊いた。

「君はしない?」

「しないために、ここに残った」

「私も、同じだね・・・」


言わなければならない事がある。

でも、口には出ない。

かといって、行動で示せる程、強くない。


「いいよ。何も言わなくて」

彼女は、笑う。


「似た者同士だもん」

「ウソだよね?」

彼女は、首を横に振った。


「僕たちだけかな・・・」

「ううん。他にもいるよ。ただ・・・」

「ただ?」

「ここを選んだのは、私と君だけみたいだね」


せめて最後は、自宅で迎えたいのだろう。

それとも、他の場所を選んだのか?


「見て、星が奇麗だね」

彼女が夜空を指差す。

都会でも、こんなに星が見える事を、初めて知った。


「そろそろ、いこうか?」

「うん」

「本当に私でいいの?」

「うん」

「後悔しない?」

「しないために、選んだ」

「ありがとう・・・」


彼女は、僕を抱き寄せた・・・


草食男子もここまでくれば、天然記念物だ。


宇宙は広い。

とてつもなく広い。


なので、地球と同じ文明がある星もあるとは言われていたが、

交わることはないと、思っていた。


しかし、交わってしまった。


その宇宙人・・・異星人たちは、地球人のサンプルを提供。

クジ運がいいのか、悪いのか、この町の住民が選ばれた。


しかも、つがいであること。


僕は、迷わず彼女を指名。

てっきり、拒絶されると思っていたが・・・


「アダムとイブだね」

「それとは違うと思う」


指定された宇宙船に乗りこむ。

既に、多数の人が乗り込んでいるが、僕たちが最後のようだ。


「ねえ、地球に未練は?」

「ないよ・・・君がいるからね」


「初めてだね。男らしいセリフ」


男らしいかわからない。

でも・・・


好きな人となら、怖くないは本当だ・・・


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旅立ちの前に 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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