第7話 前に進む。別に幸せとかじゃ―いや、とても幸せだ!

私は、金の稼ぎ方を考えた。

そして、ふと思いついた。

まあ、一考の余地はありだ。


「それで成功したからいいものの。考えが甘いんだよ。お前は馬鹿か」


狐男はいつもの席に座り苦々しくこぼした。


***


私はヘンゼルとグレーテルと相談し、カフェを開くことにした。


お菓子の家を改装し、可愛らしいカフェを作った。

魔女のカフェ。

怖いもの見たさでやってきた客から口コミで広がり、5年がたった今、売り上げで生活が成り立つ上に貯金ができるくらいには稼げている。


昼ピークを終えたカフェ。客はまばらだ。

だが、スーツ姿の狐男は今日もカウンター席に居座っている。


こいつ、毎日来る。

毎日、日替わりランチ頼んでくれる。

ありがたい。


「お前、暇なの?」

「自炊が苦手なだけだ」


首をかしげる。

料理のほとんどは、この男から教わったのだが。


とたとたと、足音が聞こえる。


「アイスココアの注文だよ、おかあさん」

「グレーテル、お店では?」

「はっ!ごめん、店長!」


12歳になったグレーテル。

金の髪を一つにくくっている。赤いエプロンがよく似合う。

もう立派にカフェを手伝えるくらいに大人になった。


少しおっちょこちょいだが、頼りになる。


「店長、仕入れ終わったよ」


グレーテルが奥から、顔をのぞかせる。


グレーテルは15歳になり、もう少年ではなく青年だ。

短く切った髪に、凛々しい顔立ち。

街で経済のことを勉強しつつ、カフェにも顔を出してくれている。


「ありがとう、ヘンゼル。疲れてないか?」

「大丈夫だよ」

「心身の健康が一番だからな。遠慮なく言えよ」


そういいながら、私は注文が入ったココアを作る。

氷、冷えたココア、そして、ふわっふわの生クリーム。


注文客を見る。常連の一人だ。


今日はどこか疲れてそうだな。

よかろう。


ココアを持ったグレーテルと共に客席に向かう。


「店長さん?」


彼女は不思議そうに私を見た。

グレーテルが机にココアを置いて、女性に笑いかける。


「ココアをご覧ください」


私はパンっと、手を打った。

アイスココアに乗せたクリームがネコの姿に変わる。

彼女は目を見開き、そして、笑顔になった。


「可愛い」


そうだろ、そうだろ。

お前も笑った方が可愛いぞ。


「ごゆっくりどうぞ」


私とグレーテルは声をそろえて言った。


***


美味しいごはんと少しの魔法が待っているカフェ。

森の中、お菓子の家だ。

見ればすぐにわかる。

定休日は水曜日。気を付けろ。

 

お前たちも来てみてはどうだ?

きっと、腹にも心も満たしてやる!


まあ、それはお前たちをいずれ食うためだがな!


終わり

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