すっぽんぽんダンジョン

タカテン

第一部:発足! 琵琶女放課後冒険部編

第?話:いきなりすっぽんぽん

 はじめての異世界ダンジョンは、なんだか不思議な感じがした。

 

 とある時期から全国の女子校の地下に続々と現れた謎のダンジョン。

 なんでも異世界と繋がっているらしく、中にはモンスターが徘徊してるらしい。


 そのダンジョンに運悪く迷い込んでしまった生徒を救うべく作られたのが放課後冒険部。

 ある一定以上の魔力を持った生徒しか入部出来ず、放課後冒険部の全国大会ダンジョンマスター・通称ダンマスがTV中継されることもあって、女の子には人気の部活になっている。

 

 その放課後冒険部に、これまで何のとりえもないと思っていた私が選ばれてしまった。

 

 正直、そんな洞窟で、しかもモンスターと戦うなんて怖い。

 だけど決めたんだ。

 ダンジョンに入るやいなや、カッコいい冒険者の姿へ変身した先輩みたいに、私もなるんだ、って。

  

 ところが。


「ほほう」


 勇気を出して異世界ダンジョンへと飛び込んだ私を、先輩がじーっと見て一言唸った。

 右手の親指と人差し指の間に顎を乗せ、時折うんうんと頷いている。

 

「えっと、どうかしましたか?」

「……うん、あのさ」

「はい、なんでしょうか?」

「君、なかなかいいおっぱいしてるね!」

「……はい?」


 おっぱいって、先輩は一体何を言っているのだろう?

 きょとんとする私を、それでも先輩は視線を下げて今度は腰回りをじろじろと見てくる。

 つられて私も視線を降ろした。

 

 いつの間にかおっぱいが丸見えになっていた。

 いや、おっぱいどころじゃない。

 何故か服が消えていて、もっと大事なところまで丸出しでって、いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!

 

「な、なんで私、いきなりすっぽんぽんになってるんですかー!?」


 慌てて両腕で大事なところを隠して叫ぶ。


「ふふふのふー。それはね、ここが異世界ダンジョンだからだよ」


 先輩がちっとも答えになってないことを言ってきた。


「これは部外秘なんだけど、異世界ダンジョンって実は『すっぽんぽんダンジョン』って呼ばれてるんだよ」

「すっぽんぽんダンジョンって……なんですかその深夜にやってる、ちょっとエッチなアニメみたいな名前はー!」

「いやいやいや、そういうのと一緒にしちゃダメだよ? 異世界ダンジョンは魔力が全て。私たちの世界のものは、自分の身体以外持ち込むことができないの。だから魔力の使い方を知らなかったり、魔力を全部使い切っちゃうとすっぽんぽんになるっていう、至極真っ当な理由付けが」

「いくら理由がまともでも、単なるエロ設定じゃないですかー!」


 涙目で訴える私に、先輩が「だよねー」って笑い飛ばした。


「でも安心して。強くなれば滅多にすっぽんぽんなんかならないし、それに」


 先輩がにへらと表情を崩す。

 

「異世界ダンジョンに男子はいないから、すっぽんぽんになっても大丈夫!」

「そんな表情で言われても安心できないですよっ!」


 怒る私に先輩が「ごめんごめん、冗談だってば」と謝ってくれるけど、すっぽんぽんダンジョンっていうのは冗談でもなんでもなく、マジな話らしい。

 そしてこのことは部外秘で、新一年生を初めての異世界ダンジョンですっぽんぽんにするのが放課後冒険部の伝統だとか。

 

 嫌な伝統だなぁ。

 てか、こんな変態ダンジョンでやっていけるんだろうか。ううっ、不安だなぁ。なんだか心がスースーするよ。

 

「って、スースーするのは心じゃなくて体だよっ! 服! 服をくださーい、せんぱーい!」

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