第70話 ちょっとした不安。
無事に観覧車から帰還した俺と美樹。帰還なんて大げさなと思ったりするけれどそれくらい怖かったわけで。それでも確かに怖かったけれど美樹が側にいてくれたお陰で足が震えて歩けないとかは無く助かったなと胸をなでおろす。
「蒼汰くん、美樹さんにしっかり甘えられた? 」
なんてからかってくる亜美姉ちゃん。まあ、確かに甘えていた状況でしか無かったわけで俺は何も言い返さず、そっぽを向いて話を逸したのだった。
それから4人は遊園地からでて電車に乗り俺達の街へと帰る。
電車にゆったり揺られているせいか亜美姉ちゃんは圭佑に頭を預けて眠っていた。
「あんだけ元気だったんだからまあ寝ても仕方ないか。蒼汰に相楽先輩今日はお付き合いありがとうございます」
圭佑が亜美姉ちゃんを見た後俺達にお礼を言ってきた。
「いや俺達も楽しんだから別に気にしないでいいよ。なっ美樹」
「はい。初めての蒼汰さんとのデート、楽しませていただきました」
俺と美樹は圭佑にそう返す。
「それにしてもふたりを見ているともう恋人同士にしか見えないんだけどなあ」
圭佑がそんな事を言ってくる。そのせいで美樹は「そんな……恥ずかしいです」と照れて顔を隠していた。積極的なのに照れ屋。凄いギャップだなと俺はクスクスと笑ってしまう。
「まあ次は千夏とのデートが待ってるんだよなあ。というか俺こんなんでいいんだろうかって思ってしまうよ。ふたりとこうやってデートするって……ある意味最低なやつだから」
ふたりが望むことであるとしてもやってることは二股の何物でもない。
「そんな事を言わないで下さい、私達が望んでお願いしているんですから。逆に蒼汰さんに私達のほうが迷惑をかけてしまってるんではって心配になるんですよ? 」
美樹はそう言ってくれるけれど……本当に難しいものだ。
「蒼汰は真剣に選ぼうとしているんだろ? 普通のやつなら何も考えずさっさとどちらかと付き合ってるだろ? だからそんな風に考えなくてもいいと思うぞ。それに相楽先輩と遠藤先輩がちゃんとわかっているわけだし。こそこそと隠してるわけじゃないんだから」
まあ隠したりしてるわけではない。確かに。
「蒼汰さんは何も悪くないですから。そんなこと考えなくて良いですから。ただただ私と千夏ちゃんを見てくださると嬉しいです」
確かに自分を貶めていても仕方ない……か。ふたりをしっかり見て答えを出すことが大事……ということなんだろうな。
「ふたりともありがとう。しっかりと見て答えを出すよ」
今まで横に圭佑しかいなかった俺に今日は美樹も横にいてくれて、ふたり優しい言葉をかけてくれる。
そうオレの横には圭佑の他、美樹と千夏がいてくれるようになった。
おかげで本当にふたりといる時間が愛しいと感じられるようになった反面、今後、美樹と千夏どちらかを選べるんだろうかと少し不安になる俺も居ることにうすうすと感じてしまうのだった。
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