第53話 すべての運ここで使い果たしてるぞ。
学校へ向かうと昨日と違いもう大分噂が広まったんだろうか他の生徒からの視線が痛かった。まあ、人気のある人と付き合ってるという話になればこうなるのは仕方ないかと視線を無視して教室へと向かう。
教室へと入った瞬間クラスの皆の視線が俺に来る。まあ、明日にしてくれと言って帰ったわけだし聞かれるのは覚悟して俺の席へと赴いた。
案の定クラスメイトは俺の美樹との関係を聞こうと周りにやってきた。「付き合ってるの? 」やら「どうやって付き合った? 」やら「遠藤先輩を紹介してくれ」やら……あれ? それ関係ねーよってことも混じってるし。
素直に付き合っていると話せば男子生徒からはすごい嫉妬の目で見られてしまう。そりゃ美樹はモテるだろうことはわかってはいたもののさすがにこの視線を浴び続けるとしんどいなと思ってしまう。それでも美樹といる限りはこれが当たり前だと納得し慣れていかないとなと心に決める。それにここでクラスメイトにはいっぺんに話をしておけば後々楽になるだろうという思惑も持っていたわけで。あらかた話し終えたかなと思っていると
「はいはい。話を聞いて蒼汰と相楽先輩が付き合ってるってわかったろ。もういいだろう? はい、みんな席に戻った戻った」
そう言って圭佑はやって来てみんなを追い返してくれた。はっきり言ってすごく助かった。普段ひとりでいることの多い俺にはすぐには慣れるのは無理だよ。
「おはよう、そしておつかれさん」
「ああ助かったよ圭佑。おはよう」
お互い挨拶を交わす。
「相楽先輩と付き合うとなったらこうなるわな。仕方ないね」
「ああ、わかってはいたもののぼっちに近かった俺にはくるな、これ」
「ぼっちじゃなくても囲まれて尋問? されればそりゃしんどいさ」
圭佑の言うとおりそうかもしれないなと思った。
「で、いつ話す? 事情ってやつ。聞いとかないとまずいってことあるのかな? 」
「いや、圭佑が知らなくてもまずいってことは無いけどな。今日の昼休みにでも話すか。先輩たちと一緒になるが付き合えるか? 」
「了解。開けておくよ。じゃ昼休みにな」
そう言って圭佑は席に戻っていった。というか圭佑居て助かったよ、ほんと。
あっという間に昼休み。俺と圭佑は中庭で美樹と千夏とともに食事を始めた。毎日参加するわけではない美優が圭佑と鉢合わせになるとまずいと思い、今日は圭佑が参加するからと連絡を入れておいた。なので美優が後から現れることはまずないだろう。きっとまだ圭佑に未練があるだろうしな。
「お久しぶりです。相楽先輩、遠藤先輩」
「こちらこそお久しぶりです。斎藤くん」
「久しぶりだね。斎藤くん」
3人は挨拶を交わしていた。俺は別にしなくていいだろう、いいよね?
その後圭佑に佐伯さん対策で仮の恋人となったことを説明した。
「そういうことですか。でも相楽先輩は蒼汰のこと好きだったはずですし本当に付き合ったとしても問題はないんですよね」
圭佑が突っ込んだことを聞く。
「はい、私は全く問題ありません。蒼汰さんとお付き合いできるならすぐにでもさせていただきますよ」
美樹は少し顔を赤くしながらも毅然とした表情で答えているし。でも俺としてはまだそういうわけには行かないため
「まだオレの心が決まってないから。今はお互いを知っていく段階ってことで……」
と、ごまかそうとしたが
「それに蒼汰さんを慕っているのは私だけではありませんので……そのことが付き合えない理由としては一番大きいかと」
美樹は圭佑に言わなくて良いことまで言ってしまう。圭佑は「え? 」と意味がわからないと言った顔をして俺を見る。横で千夏が顔を赤くもしているし。どうするんだこれ?
「あーなんだ。って美樹、これ言わなくても良かったんじゃないか? 」
俺はそう言うが
「蒼汰さんの親友でしょう? きちんと伝えておかないといけないかなと思いまして」
美樹はちらっと千夏を見ながらそう返してくる。まあ、圭佑には伝えても問題はないけれど千夏の気持ちがあるだろう。もう千夏、さらに顔を真っ赤にして困りまくってるって。
「あー。慕ってるもうひとりというのは私だ……」
このままだと埒が明かないと判断したからだろう千夏は仕方なさそうに圭佑にそう伝えた。横にいる圭佑は俺を見、千夏を見、美樹を見……そしてため息をついていた。
「はぁ……なんだかいつのまにか複雑になってるなあ。蒼汰、お前多分すべての運ここで使い果たしてるぞ」
圭佑は呆れたように俺を見てそういうのだった。
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