第50話 中庭での団らん。
さて、噂になってたら面倒だなと思っていたけれど昨日の放課後に佐伯さんに話してからそう時間が経ってないからかまだ広まってはなさそうで、いつもどおり学校に着くことができた。嫌な視線を受けずにね。ただ、今後どうなるかわからないなあと多分暗い顔をしていたんだろう俺に
「おはよう蒼汰。ん? なんか今日は落ち込んでる? なにかあったのか? 」
心配してくれた圭佑が声をかけてきた。
「ああ、おはよう圭佑。いやね、ちょっと面倒になりそうなことがあってね。まあ、そのうち分かると思うよ。心配してくれてありがとな」
そんな圭佑にお礼を言った。
「蒼汰自身でそんな面倒が起こりそうに思えないし……予想では相楽先輩のことかなとは思うがな」
圭佑のその言葉に正解!と言いたくなる俺。
「予想通りだよ。まっ楽しみにしてたら良いよ。俺は面倒くさいんだけど」
昼休みいつもどおりの中庭でみんなと昼食。今日は美優も来ている。最近美優はちょくちょくこちらに来るようになった。美優曰くたまにはクラスから出ないと息苦しいということらしい。ただ、友達が嫌とかそういう理由ではなく美優も結構モテるらしく男子生徒から声をかけられることが多いためゆっくり食事ができないこともあったりするとのことだ。
「美樹のほうは噂とかは大丈夫? 」
広まるなら2年からだろうと思い美樹に聞いてみた。
「はい、ちょくちょく聞きに来られる方がいらっしゃいました。なのでしっかりと蒼汰さんは私の恋人ですと伝えておきました」
あれ? それでいいんだけどなんかおかしいなと思う俺。一応仮の恋人じゃなかったっけ? いや、そう認識してもらうことは間違いないんだけどなんか違う感じがするのは俺だけ? まあ噂が今後広まりそうなことは美樹の言葉ではっきりと確信できたのは良かったことだが。それでも
「そう……なんだ」
俺は困惑したような感じで返事をしてしまった。
「多分これから広まっていくと思うよ。美樹も戸惑いなく宣言してたからね」
千夏は少し呆れた感じで美樹を見ながらそう言った。
「はい? もう蒼汰さんと姉さん付き合うことになったんですか? 」
美優は驚いたようでそう聞いてきた。なので昨日の佐伯さんとのやり取り上で仮の恋人を演じることになったことを説明した。
「仮の恋人ですか? はぁ……そういうことなんですね。でも姉さんは事実、蒼汰さんを好きなわけですからもう本当に付き合ったら良いんじゃないですか? 」
美優はそんな事を言ってしまう。
「それもありだと私は思ったりしますが……蒼汰さんの気持ちがありますからね。それに……」
美樹はチラッと千夏を見ながら言った。
「蒼汰くんの気持ちがはっきりしたわけではないのだからそういうわけには行かないだろう? 私もそう思うよ」
美樹の視線に気づいたのか少し気まずそうに千夏は言った。
「でも、付き合いながら愛が芽生えるそんなこともあると思うんですけどね」
美優はまだこの話題に突っ込んでくる。美樹のことを思っていってるのか、面白半分なのかいまいちわからないが。
「いや…だが」
千夏は何も言えないのか言葉に詰まってしまう。
「千夏ちゃん。隠していると美優ちゃんから今後もいろいろと言われるかもしれませんよ? 素直に言ったらどうですか? 」
美樹は千夏を後押しするようにそんな事を言った。
「はぁわかったよ。美優ちゃん、えーと。私もね。蒼汰くんのことを気になっているわけで……いや、まだ恋愛感情かははっきりしてないんだよ? それでもやっぱりいろいろと……ごめん。これ以上は無理だ」
千夏は真っ赤になって照れた顔を下に向けそう言った。
「あっそうですよね。千夏先輩もでしたね。ごめんなさい、おもわず姉さんを応援したくなっていらないこと言っちゃって」
やっと気付いた美優は千夏に謝っていた。
「私も? ということは美優ちゃん気付いていたのかい? 」
すぐに驚いた表情に変わった千夏は美優にそう問いただす。
「そりゃ見ていればわかりますよ。というよりばればれですよ? 」
そう美優に言われた千夏はまた顔が真赤に染まっていった。
途中から俺抜きでの会話……これっていわゆるガールズトークか? と思いながらとりあえず俺はぼんやりと黙って聞いていた昼食時間になったのだった。
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