第39話 素直に行ってみようか。
帰り道、私、千夏が悩んでいる事を心配した美樹が「すこし寄り道していきませんか」と誘ってくれたので喫茶店に寄っていくことにした。
私達は、一番奥の席につきウェイターさんに注文を頼む。私はコーヒー、美樹はクリームソーダだ。注文が来ると美樹はクリームソーダを一口飲んだ後、早速話し始めた。
「遠くからでしたので何を話していたかわかりませんが千夏ちゃん、大丈夫ですか? 」
美樹はとても心配そうに私を見て言った。
「心配させてすまない。今回の事でいろいろと考えることがあったんでね」
「千夏ちゃんがそんな風に困るのって珍しいですね。いつもきりりとかっこよく過ごしていますから」
美樹はそう言いながら温かい微笑みで私を見てくれている。
「まあ、そういうときもあるさ」
私は苦笑しながら美樹に答える。
「千夏ちゃん、悩み事私に話せます? 愚痴くらい聞きますよ? 私程度が役に立つかわかりませんが助言が出せるなら出しますし」
美樹は優しくそう言った。
私は美樹に素直に話すことをした。蒼汰くんに関しての話は美樹が嫌がるかもしれないと思ったけれど、なぜか隠して置きたくない気持ちだったので隠すことはしなかった。告白中、蒼汰くんの顔が浮かんだこと。新見くんに私を知るために友達になってほしいと言われたけれど、蒼汰くん以外で男の友達を作ることに嫌悪感を感じたこと等。
「千夏ちゃんが蒼汰くんを気にしていることはわかっていましたので全然問題ないですよ? 逆に素直にいってくれたことのほうが嬉しいです」
美樹は怒ることもなく受け入れた感じで話を聞いてくれた。
「千夏ちゃん、何も悩まなくていいと思いますよ。千夏ちゃんはどうしたいんですか? 素直な気持ちはどうですか? 」
そう言われて思うこと。男の友達は蒼汰くんだけでいいと。蒼汰くんのことが好きかどうかはよくわからない、まだわからない。それでも側に居たいとは思うこと。
「美樹に以前いろいろと言われたけれど、蒼汰くんのことが気になっていることは間違いないみたいだ。側に居たいと思っているね。そして、男の友達は蒼汰くんだけでいいと思っている……だね」
ちょっと美樹の顔色をうかがいながら話していたのがバレたのか
「千夏ちゃん、私は怒ったりしませんよ。だって前々からそうじゃないかと思ってましたし。あまり男の人に良い感情を持っていない千夏ちゃんが蒼汰くんに対してだけは冗談を言ったり、名前で呼んで欲しいと言ったり……いつもと違うのはバレバレでした」
美樹は胸を張ってそんな事を言う。というよりバレバレだったのか私? 自分ではわからない……結構恥ずかしいことをしていたのか? とすこし心配になってしまった。
「千夏ちゃん、素直になっていいですよ。好きになることは自由です。我慢なんてしなくていいんですよ。好きになったなら好きでいいんです。そして、いつかどちらかが選ばれることになったとしてもそれは蒼汰くんが選ぶことです。私達が争うことなんてありません。もしライバルという形になったとしても友達なのはかわりませんし、私は千夏ちゃんのこと嫌いになんてなれません。もういっそのこと千夏ちゃんも蒼汰くんのことが好きなら私とふたりがかりで愛してもいいんじゃないですか? 蒼汰くんが良いと言ってくれるならふたりとも恋人なんてありじゃないかと思いますよ? 」
美樹がそんな事を言って笑う。いや……最初の方はわかるんだが、ふたりとも恋人ってのはどうかと……でも、そんな話をしてくれた美樹を見て笑ってしまう。なんで蒼汰くんのことになるとポンコツなんだろうと。今話したことは多分本気で言ってるはず……
「はぁ、ほんとに美樹は普通じゃないことを平気で言って。でもありがとう、なんだかスッキリしたよ。私も素直に行ってみようか」
そう言って私は美樹にありがとうと微笑んだ。
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