第38話 千夏ちゃん告白される。



 珍しく私、千夏の下駄箱に封筒には行った手紙が入っていた。男っぽいせいかこういう物をもらうことはほとんどない私だからちょっと驚いてしまった。

 それをみた美樹が


「千夏ちゃん、手紙ですね。お呼びの手紙でしょうか? 」


 貰いなれているからか美樹は軽くそんなことを聞いてくる。ラブレターとは言わないんだ、こういう手紙ってと変なことを考えたが


「さて……私に手紙を出す変わった人だから、なんて書いてあるのだろうね」


 私は驚きを表情に出さないように美樹に返答するのだった。




 内容を確認してみると、放課後校舎裏に来て欲しいと書いてあった。そのため美樹に一緒に帰れないことを伝えると


「私待ってますよ。蒼汰くんには今日は別に帰ってもらいましょう」


と言ってくれた。一緒に帰りたいだろうに私は


「私に気にせず蒼汰くんと先に帰っても良いんだよ? 」


 と伝えるけれど


「こういう時に自分を優先して側に居ないなんて友達じゃありません。それになんとなくですが今日は側にいないといけない気がするのです」


 胸を張ってそういう美樹に私は嬉しさを覚えるのだった。




 蒼汰くんには美樹からスマホで連絡を入れてもらい先に帰ってもらうことになった。私と美樹は揃って校舎裏へと向かう。美樹は少し離れた場所から見ていてくれるようだ。美樹が告白される際に私がいつもいる定位置で。そういえば、告白の現場は美樹のお陰でたくさん見てきたなとその光景を思い出す。まさか逆の位置なるとはとすこし苦笑いをしてしまった。


 校舎裏で待っていると、どうもひとつ下、1年生らしき男子生徒がやって来た。よく見てみるとどこかで見たことがあるような気がする。でもどこでみたかは思い出せないそんな男子生徒だった。


「お待たせしました、遠藤先輩」


「いや、私も先程来たところだから」


 その男子生徒から声がかけられたのでこの男子生徒が呼び出したんだなと確認できた。


「えっと、俺、山口と同じクラスの新見 涼【にいみ りょう】って言います。相楽先輩と一緒に山口のところに来ていた遠藤先輩を見て一目惚れしてしまいました。好きになりました。よかったら付き合って下さい」


 告白の言葉で蒼汰くんと同じクラスの男子生徒だと思い出した。でも一目惚れかと少し残念に思う。結局は外見なのかと。どうもこういう告白は美樹を見てきたせいか好きにはなれない私だった。


「新見くん。悪いけれど告白は受け入れられない。申し訳ない」


 私はすぐに答えを出す。しかし新見くんは


「それは他に好きな人がいるからでしょうか? 気になる人がいるからでしょうか? 」


 断った理由? を聞いてきた。その言葉を聞き思い浮かんだのは……蒼汰くん。何故と思うが自分から思い浮かべたわけではないのだからどうしようもない。おかげで顔を少し赤くしてしまった私。それでも


「いや、私に好きな人や気になる人はいないよ。断ったのは君が私に一目惚れ、結局外見で私を判断したからだよ。その理由では申し訳ないが付き合う気にはなれない。申し訳ない」


 なんとか断りを入れるのだった。それでも、まだ粘ってくる新見くん。


「でしたら、遠藤先輩をもっと知りたいのでまずは友達になってもらえないでしょうか? 」


 その言葉をもらった私は友達? 蒼汰くん以外に男の友達? それを考えるとなぜか嫌な気持ちになってしまいどうしたらよいかと少し悩んでしまう。

 なんでこんな気持ちになってしまうのだろうと。ただの友達になるだけなのにと。




 結局、私は友達の件の返答について一時保留にしたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る