第22話 圭佑を先輩たちにご紹介。



 今日の昼休みは昼食に圭佑も呼んで美樹先輩と遠藤先輩に紹介することにしている。イケメンで性格も良い圭佑だから、問題なく先輩ふたりにも気に入られるんじゃないかなとは思っている。

 そうそう、一緒に昼食を取る場所は、雨がふらない限りは中庭で取ることに決まっていたので、わざわざ俺の教室まで来てもらわず今は中庭で待ち合わせをするようにしている。


 美樹先輩たちはなぜかいつも俺が来るより先に来ている。授業が延びたりしないんだろうかと思ってしまうが「無理とかしてませんよ。終わったら普通に来ているだけです」と問題はない様子。


「おまたせしました、先輩。今日は俺のクラスで唯一の友達の圭佑を連れてきました。よろしくしてやって下さい」


「はじめまして、斎藤 圭佑です。蒼汰の唯一の男友達やってます。よろしくです」


 唯一の男友達と他人が言うとちょっとむかつくなと思ったりするけれど、そのとおりなので何も言えないんだけどね。


「はじめまして、私は遠藤 千夏。よろしくお願いするよ」


「はじめまして、相楽 美樹です。蒼汰さんにはお世話になってます。どうぞよろしくお願いします」


 とりあえず挨拶を交わしてもらった。


 圭佑は女慣れしているんだろう、その後の先輩たちとの会話は問題なかった。


「1つ聞いてみてもいいですか? 蒼汰と友達になった経緯とか聞いてみても……蒼汰に聞いてもそのへんは教えてくれなくてですね。今まで女っ気なかったんで……ああ、ひとりだけ蒼汰抱きつき魔がいるけれど、それは除外として。」


 圭佑が蒼汰抱きつき魔と言葉が出た瞬間、美樹先輩の眼がなぜか怖くなっていた。圭佑よ、なぜそんないらない情報流すんだ。泣くぞ。


「お話しても問題ないですよ。私が蒼汰さんに告白したんですけど、あまりにも身勝手な告白でしたので振られてしまいました。ですが、諦める気はありませんので、まずは友達になっていただいたというところですよ? 」


 不機嫌そうながらもきちんと答えてくれる美樹先輩。

 圭佑は、「おいおい、蒼汰聞いてないぞ」と驚きながら俺に声をかけてきたが、そっぽを向いて聞いてないふりをしてやった。


「それよりも……蒼汰さん抱きつき魔とはなんなんでしょう? 」


 美樹先輩……顔怖いです。


「それはですね。圭佑の幼馴染で4つ上のお姉さんがいるんですが、なぜか会うと抱きついてくるんですよ。圭佑には悪いんだが俺はちょっと苦手なんだよなあ。」


 俺は美樹先輩が怖かったのでとりあえず説明をした。


「蒼汰は女慣れしてないもんな。いきなり抱きつかれても困惑するだけだろうな。まあ、幼馴染として俺が謝るから許してやってほしい。」


 圭佑は少し困った感じで俺に詫びを入れてきた。


「まあ、何故抱きついてくるのか俺にもよくわからない人なので気にしないで下さい」

 

 とおれは美樹先輩に伝えると


「もし抱きつかれたいなら、私が抱きつきますから……」


美樹先輩はみんなに聞こえなさそうな小さな声で何やらつぶやいていた。





「話は変わりますが、遠藤先輩は彼氏とかいないんですか? 」


 圭佑……お前、結構ズバズバと突っ込むな。でも、遠藤先輩が静かだったので、話題としてはなんとも言えないがナイスだ。


「んー。私はいまいち恋愛という面は疎くてな。恋愛で言う好きという気持ちがよくわからない。だから、それがわかるまで当分はできないかなとは思ってるよ。」


「そういうもんなんですね。でも気になる人とかいないんですか? 」


 まだ突っ込むか! 圭佑! 


「気になる人か。そうだな、山口くんくらいかな? 」


 なぜかちょっとニヤニヤした顔で、遠藤先輩は言う。


「遠藤先輩、からかうのは止めましょうね。美樹先輩が怖いです」


 俺は遠藤先輩に釘を刺す。


「恥ずかしいです……そんなに怖い顔していましたか? 」


 恥ずかしそうに顔を隠して美樹先輩は言った。




「ほんとに山口くんのこととなるとポンコ……いや、なんでもない」


 遠藤先輩はそう言葉を濁すのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る