第17話 ふたりの友達。



 教室に着くと、千夏ちゃんが私の席に座って待っていた。私が教室へ入ろうとすると、確かにいつも周囲の視線は感じているけれど今日の視線はちょっと違うことをしっかりと感じた。きっと、蒼汰くんと一緒に居たからかなと先程の会話を思い出して「ふふっ」と笑みが出る。周りの視線をスルーして。


 そして、私は千夏ちゃんの側に近寄ると


「千夏ちゃん上手くいったよ、ありがとう」


 いつものように千夏ちゃんに抱きついていく。


「よかったね、美樹」


 そう優しくいってくれる千夏ちゃん。本当に大切な友達です。


「でも、千夏ちゃんも一緒に行ってほしかったです。千夏ちゃんも蒼汰くんとお友達なのですから」


 少し頬を膨らませて千夏ちゃんに文句を言う。


「せっかくだし、ふたりきりのほうが良いかなと。気を使いすぎたかな? 」


 そんな事を言う千夏ちゃん。ぷんぷんです。


「そんなこと考えちゃ駄目です。今度から千夏ちゃんも行きますよ? 嫌じゃないのなら」


 確かにふたりきりになりたいと思うこともあるのは否定できません。それでも、千夏ちゃんには近くに居て欲しいと思うのは私の身勝手でしょうか? そう思いながらもいつものように千夏ちゃんに甘えてしまう私。


「あーわかったわかった。嫌じゃないから、今度から行くわ」


 やった、千夏ちゃんから了承を頂きました。今度から一緒に行きますよ千夏ちゃん。


 と、朝から私は周囲からの視線の中、千夏ちゃんとそんな会話をするのでした。






 教室に着くと、クラスの皆からの視線が集まってきた。きっと朝から美樹先輩と歩いていたことがきっかけだろう。校門だし目立つからしかたないか。だけど、普段からろくに関わり合いもない人達だしスルーでいいかと俺の席へと向かい座り込む。

 すると、慌てたようにクラスの唯一の友達、圭佑が俺の方へとやって来る。


「おいおい、どういうことだよ? 蒼汰? 相楽先輩と朝から一緒に歩いていたよな? 」


 圭佑……今日は早いな。朝練なかったのかな。それにしても挨拶くらいしろよ、びっくりしてるのかもしれないけどさ。


「おはよう圭佑。びっくりしているのかもしれないけれど挨拶くらいしろよ」


「ああ、悪い。おはよう蒼汰」


「まあ、周囲が騒がしくなるとは思ってたんで良いんだけどね」


「だよな? それにしても相楽先輩とどんな関係なんだよ? 」


 なんかいつもだと圭佑なら軽く流しそうな話題なんだが、すごく食らいついてくる感があるな。


「なんか今日は食いつきがすごいな、圭佑」


「そりゃあの相楽先輩と蒼汰だからな。気になって当然だろ? 友達として」


 んーここで友達としてと言われるとなぜか違和感があるが、気にはしてくれているということなのだろう。


「簡単に言うと美樹先輩と友達になった。あと遠藤先輩ともね。以上」


「簡単すぎだし以上ってなんだよ。それに遠藤先輩ともかよ。一気にリア充組になってるし」


「なんだよリア充組って。まあ、友達になったというだけだからなあ。それ以上何を伝えれば良いんだ? きっかけやらそんなこと話す必要ないだろ。恥ずかしい」


「そう言われると……確かになぁ」


「まあ、圭佑にはきちんと後で紹介するよ。唯一の友達だからな」


 俺は圭佑にきちんと紹介することを約束しておいた。


「いいのか? 」


「ああ、圭佑とも仲良くして欲しいと思ってるから」


 素直に思っていることを伝える。


「わかったよ。蒼汰の友達として恥ずかしくないようにするよ」


 圭佑、なんだよその返しは。


「なんだよそれ? 普通どおりでいいよ」


 俺はそう言って笑ってしまうのだった。

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