第12話 友達は「期間限定」で。



 私、美樹は部屋に戻るとすぐさま千夏ちゃんへ電話をしました。スマートフォンなんて持っていませんので、部屋の固定電話を使いまして。美優のアイデア、友達になる手段を相談しなければと。

 ですが、千夏ちゃんは私に「普通に友だちになって下さい」と伝えればいいだけでしょ? 軽くと返されました。よくよく考えると確かにそのとおりで。


 その言葉で、美樹は心に決めました。明日山口さんにお願いしましょうと。




 山口さんに初めてあったのは入学式の日。2年生になり、これから後輩のお世話をしていかなければと緊張していたのを覚えています。ですが、周りの方々はそんな私に気づきません。「しっかりしてるな」「相楽なら大丈夫」そんな言葉しか頂けません。


 そんな中、初登校の1年生が校門から入ってくるのを私達2年生は見守っておりました。皆さん初めての登校大丈夫でしょうか? 緊張してないでしょうか? なんて考えていたように思います。私自身緊張しすぎていたのにちょっとおかしいですね。


 そんな中、校門から入ってきた山口さんが私をじっと見ていました。どうしたんでしょう? と思っていると、山口さんは私に声をかけてまいりました。


「おはようございます先輩。なんか緊張しすぎですよ。はい、これ」


 他の生徒ではなく、私にそう言って飴玉を下さいました。

 それを頂いた私は、飴玉は校則でもってきていいものだったかしらと考えてしまったお馬鹿な私。


「飴ちゃん、俺のお気に入り。それでもなめて緊張ほぐして下さい、先輩」


 山口さんはそう言って校舎へと向かっていきました。

 私はそれほど緊張していたのでしょうかと顔を触ってしまいます。

 あっお礼を言いそびれてしまいました。


 それが山口さんとの出会いでした。他の人には大したことのない出会いなのかもしれません。ですが、後輩に元気づけられたことにおたおたしながらもとても嬉しかったのを覚えています。


 えっと、飴玉をもらえたことが嬉しかったわけではありませんよ。勘違いしないでくださいね。嬉しかったのは私が緊張していることをわかってくれたことです。

 ただ、それだけ。それだけのこと。

 ですが、誰一人そんな言葉をかけてはくれませんでしたから。美優ちゃんでさえ多分わからなかったと思います。


 次第に思いが募り千夏ちゃんへ相談しました。そして告白へと。今考えるとなぜ今の私には困難度が高い告白になったのか疑問に思ってしまうのをおかしく思ってしまいます。


 美優ちゃんが言ったように友達から進めばよかったのかもと。ですが、こればかりは仕方ありませんね。


 また、山口さんに告白したことで誠実な態度や山口さんの考えを知ることができました。おかげで、私はさらに惚れ直してしまいました。


 それに、告白が失敗したことで、周りが見えなくなっていたからか私は身勝手な考えをしていたんだってわかることもできました。山口さんから指摘されたことは私として十分反省すべきことだと考えています。




 とりあえず、山口さんに告白して友達からはじめられるよう頑張りたいと思います。告白では言いませんが「期間限定」で。だってその後、恋仲に移行したいですからね。

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