第10話 思ったよりいい子でした。



「私も興味なかったから今までろくにあなたのこと聞かなかったけれど、話してみると興味深く面白かったわ。特に私と姉さんを切り離して考えるところ。私としては好印象。いつも姉さんと比べられたり、私のことより姉さんのことばかり聞かれたりすること多かったから」


 相楽は、俺に対してそんな事を言った。


「おいおい、お前も似たようなこと俺にしてるじゃん。俺に対して圭佑のことしか話題に出さない相楽さん? 」


 ニヤニヤして少し嫌味を言ってやる。


「ほんとごめんなさい。私が嫌なことあなたにしてたんだった思うと恥ずかしくなるわ。今更だけどこれから気をつけるわ」


 そう素直に謝る相楽。やっぱり人を好きになると周りが見えなくなるのだろうな。ほんとこう素直なら俺も嫌にならなくてすむんだけど。


「ねぇ山口くん。廊下見てみて」


 急に相楽からそんなことを言われた。


「どうした? 」


 俺は不思議に思い言われたとおり廊下を見る。あちゃ、今日も来てました、相楽先輩。ただ、今日はこっちを見ながら廊下を通り過ぎていきました。人だかりを引き連れて。


「姉さん、ほんとに気に入ってるのね」


少し呆れたように相楽は言う。


「悪いけどさ。相楽先輩にもうすこしどうにかならないか言ってくれない? 」


俺は相楽にお願いをしてみた。


「うーん。というよりも、姉さんこれくらいしかできることないって言ってたからね。山口くんに直接声をかけてしまうともっと迷惑をかけちゃうって。遠くから? 見つめる程度しかしちゃいけないかなって。いろいろと考えてはいるみたいよ。まあ、周りにしたらはた迷惑なんだけど」


 少し笑って相楽は言う。


「確かになあ。声を掛けられる……嫉妬の視線や罵声が怖いな」


「これくらいは許してやってくれないかなって私は思うけど、こんな姉さん初めてだし」


「ふぅ、俺自身に被害は出てないししばらくは様子見するかな」


「よかったらそうしてあげて。じゃ私は戻るわ。またね」


 相楽はそう言い残し立ち去っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る