第479話宗雄の死と九条家の対応

麗の一行が奈良に出発した後、大旦那は香料店の晃を九条屋敷に呼び出した。


大旦那

「どうや、隆の回復は」

「お蔭様を持ちまして、ほぼ、普通の生活に」

「麗様のお顔を見てから、ほんまに元気になりました」

「ありがたいことです、お薬師様で福の神です」


大旦那

「ところで、さっき刑事から連絡があった」

「フィレンツェで宗雄が死んだ」

「ついに・・・ですか」

大旦那

「恵理も死んどるから、一緒に日本まで送らせるけれど」

「その後は、弁護士に頼んで内々に処理する、誰にも知られんように」

「それが一番と思います」


大旦那

「で、問題は奈々子と蘭や」

「奈々子は・・・すでに離婚は成立しとりますが・・・むしろ蘭でしょうか」


大旦那

「いや、奈々子が、宗雄の死を聞いて、また気が抜ける、それも心配で」

「下手をすれば、どこかの施設に入れなあかん」

「そうなった際に、蘭をどうするか」

「高校二年で、転校したばかりで、今度は久我山から高輪に転居で」


大旦那

「麗が知ると、また苦しむと思うてな」

「苦しむ必要もないのに、時々お人よしや」

「蘭を京都の大学に入れて、その時に、うちで引き取ります」

「あと、二年は都内で仕方ないと、そうでないと不自然です」


大旦那

「それまで、奈々子がダメなら。桃香か美里と住まわしてもと、思うとる」

「蘭が荒れると、おそらく麗が苦しむやろ、それが嫌や」

「麗様は、街衆の評判も、かなり高まっとります」

「余計なことで、麗様の神経を悩ませたくありません」

「香料店の組合も、麗様にお目通りをしたいと」

「是非、助言をいただきたいとまで、そんな話になっとります」

大旦那

「ありがたいことや、麗も京都に受け入れられて」

「意見も言うけれど、確かにビシッと筋が通っとる」

「あれなら、人気も出る、話を聞きたいと思うやろな」


じっと聞いていた五月が話に加わる。

「難しいのは宗雄の死を、奈々子と蘭ちゃんに言う時期と」

「もちろん恵理の死も伝えますが」

「恵理と宗雄の関係は・・・蘭ちゃんには?」


大旦那は厳しい顔。

「夏休みに、奈々子と蘭を呼んで、因果を含める」

「九条家は被害者や、奈々子と蘭が何をした、と言うわけでもないけれど」

「後々、九条家に好意を持たれているなど、勘違いされても困る」

「それでも、言える範囲で全て、話す」


五月

「とにかく麗様には、迷惑が及ばないように」

「これ以上は、複雑に困らせとうない」

「内密を貫いて、そうしましょう」

大旦那

「吉祥寺の香苗と、鎌倉の瞳にも、状況を」

五月

「わかりました、それはお任せください」

京都九条家では、「内々」の話が続いている。

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