第449話麗と葵は喫茶店で雑談

麗は、喫茶店のメニューを見ながら、珍しく楽しそうな顔。

「つい、コロンビアにしたけれど」

「珈琲豆の種類も、紅茶の種類も多い」

「アイリッシュ珈琲とか、パキスタン珈琲、パキスタンティーもあって」

「それでいて、食事はトーストとサンドイッチ、クッキーだけ」

「食事メニューよりも、飲み物が充実している」


麗の楽し気な顔と、言葉につられて、葵もメニューを見る。

「パスタとか、食事を出す喫茶店もありますが、ここは飲み物が中心で」


「女の子は、パフェとか、そういうのが好きと思うけれど」

「ここの店は、その手間暇よりは、飲み物で勝負かな」

「まあ、いろいろな種類の喫茶店があるのは、それでいいと思う」


葵はメニューに目をやったまま。

「ところで、私、アイリッシュ珈琲好きです」

「ホイップクリームの上に角砂糖、それにアイリッシュウィスキーをかけて、火をつける」

麗もすぐに反応。

「できれば、周囲を暗くして」

「そうすると、角砂糖から青白い炎が」

「少し幻想的な雰囲気になる」

「お洒落な感じで、お祝いの時とかに、合いますね」

麗は葵を真正面から見る。

「葵さんの誕生日とか?」

葵は、ドキッとして、胸をおさえる。

「祝ってくれます?」

麗は頷く。

「それは当然、大パーティーに」

葵は、うれしくて仕方がなくなるけれど、麗はあっさりと話題を変える。

「このパキスタン珈琲とか、ティーは」

「珈琲とか、お茶の上にミルクとバターが乗る」

「寒い時期に、身体を温める効果があるのかな」

「それにしても、重たそうな、コクがありそうな」

葵は、少し粘る。

「麗様、私の誕生日パーティーに、加えてくれます?」

麗は、笑顔。

「そうだね、飲み物メニューもいろいろに」

そして、含み笑い。

「ダイエットを気にする人は、パキスタン珈琲もティーも難しいなあ」

「特に蘭とか、桃香は」

葵は、麗の含み笑いが楽しくてたまらない。

「それ、蘭ちゃんと桃香ちゃんに、目の前で言えます?」

麗は、また笑う。

「うーん・・・蘭は泣いて怒る」

「桃香は、やけ飲みするかも」


そんな、たわいない話をしていると、麗のスマホが光った。

麗がスマホを見ると、吉祥寺の料亭の香苗からのメッセージ。

「夕食にお立ち寄りください、お待ちしております」

「是非、食べてもらいたいメニューがありますので」


麗は苦笑しながら、スマホの画面を葵に見せる。

「予想外の展開に」

今度は、葵が含み笑い。

「無理ですって、麗様が吉祥寺で香苗さんとか、桃香さんから逃れるなんて」

「食べてもらいたいメニューって何だろう」

「桃香ちゃんから、実は聞いています」

「和風食材を使った洋風料理とか」

「麗様を驚かせたいとか、自信満々でしたけれど」


麗は首をかしげた。

「予想がつかない」

「懐石料理店で・・・和風ハンバーグだと、大豆のハンバーグで定番か」

「桃香が自信満々?」

「桃香は、いつも自信満々だからなあ」


葵は、困惑気味の麗が面白い。

「麗様、目が丸くなって、可愛いです」

「そのお顔も好きです」


麗は意外な言葉で、珍しく頬が赤くなってしまった。

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