第339話慣れてきた麗

麗は混浴の後、涼香と自分の部屋に戻った。

少しだけ話をして、添い寝。

もはや、拒絶も不自然で野暮と思う。

「これが九条家では、本来でずっと続いてきた」となると、例外もなかなか難しい。

涼香もしっかりと麗を求めてくるので、麗は懸命に応じた。

「お世話係を喜ばすのも、役目なのか」と思うけれど、そんなことを感じさせるのも、野暮の極みと思った。


麗は、朝、涼香の胸の中で目を覚ます。

涼香は輝くような笑顔。

「ほんま、おいしゅうございました」

「何度も、天国やらお花畑に」


麗もようやく口を開く。

ただ、「おはようございます」と、麗らしいシンプルな言葉。


涼香は、再び麗の顔をしっかり胸に包み込む。

「直美さんとか佳子さんほど、立派ではありませんが」

「それでもEぐらいは」


麗は、その胸から解放されて、フォローの言葉。

「そう言われましても、気にかけて見たことがありません」

「涼香さん、すばらしく美しいお体、お肌で」


そんな会話の後、また混浴を経て、朝食を食べていると、茜が安心したような顔。

「麗ちゃんも、相当肩の力が抜けたみたい」

「慣れてきた?」


麗は、素直。

「郷に入っては郷に従えかなあ」


その答えが面白いのか、五月はクスクスと笑うし、大旦那も笑顔。

大旦那

「わしは、そういう中、育っとる」

「だから、気にせんで構わん」

「気にするほうが変や、偏屈や」


麗は「はぁ・・・」と頷くばかり、はっきりと納得までは、なかなか難しい。


朝食を終えると、茜。

「なあ、麗ちゃん、この後は下鴨神社と隆さんの見舞い」

麗は頷く。

「蘭も行きたいとか」


茜は頷いて、また違う名前を言う。

「それでな、葵さんと美幸さんも、行きたいと」

「昨日、話をしていたら、そんなことになって」


麗は、聞いていなかったので、困惑。

「蘭がそうなると引くよ、どうかなあ」


茜は首を横に振る。

「それはそうかもしれんけど」

「麻友さんと詩織さんが、その話を聞くと」


麗は面倒で、ため息。

狭い京都社会で、仲間外れが知られると、それは後々厄介なことになると思う。

しかし、下鴨神社参拝くらいはいいけれど、病院見舞いにそんなにゾロゾロと行って、どうなのかと思う。


「隆さんだって晃さんだって、驚いて恐縮して」

「とても見舞いの雰囲気ではなくなる」


茜も面倒そうな顔。

「まあ、見舞いの品も、お嬢様方の競争になっても困るしな」

「そういうのが、うるさい社会やから」


麗は、茜の顔を見た。

「姉さま、成り行きに任せよう」

「葵さんと美幸さんは仕方ない」

「他に何かあったら、調整するからいいよ」


茜は、麗の顔を、すがるような気持ちで見つめている。

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