第322話葵は結局落ち着かない。湯舟での佳子と麗

喫茶店を出た麗と葵は、神保町駅までは一緒。

神保町駅から麗は三田線、葵は都営新宿線になるので、一旦別れることになる。

葵が笑顔で「それでは麗様、あ・・・麗君、また明日」と声をかけると、麗は「じゃあ、また」と実にあっさりとした感じ、手も振らずに葵の前から姿を消す。


「もう!まったく気を揉ませるお人や」

葵は、残念には思うけれど、喫茶店デートも達成、その前の佐藤先生との話にはご相伴、いつもの通学を通じて、他の関係筋の娘よりは相当リードしていると思う。


ただ、引っ越し関係のほとんどの用事が済んだとはいえ、不動産の麻友は麗にも九条屋敷にも信頼がある。

また、京都に戻れば、学園の詩織が持ち前の積極性で麗に迫るのは避けられない。

銀行の直美も、今は様子見をしているけれど、いずれは、その冷静さと上品さで、麗が関心を持つかもしれない。


「うちは、九条財団での仕事を理由に、大学を追っかけ」

「今はうちが、リードして当たり前か」

「それでも都内限定で、麗君って言える、気持ちが通じたのかなあ」

「でも、週末には京都に戻る、となると、他の娘さんにも神経使うなあ」

「まさか九条家後継に京に戻らないで、とも言えんし」

葵の心は、そんな状態、麗と別れても結局落ち着くことはない。



さて、麗は三田線の白金高輪で降りて、まっすぐに帰宅。

初夏の汗もかいていたので、そのまま佳子と一緒に入浴。


佳子

「今日もお疲れ様でした、神経を使われたような」

麗は素直。

「はい、まあ、先生と話をしたり」


佳子は麗の手を取った。

そして自分の美しく豊かな胸に導く。

「そういう時は、気分転換を」

「おもちゃにして、かまわんです」


麗が焦って手を離そうとするけれど、佳子は許さない。

「最近、重くなりまして」

「そう、下を支えてもらうと、いい感じで」

とまで言ってくる。


麗は、手を離すことは諦めた。

素直に佳子の胸を支えながら

「自分にはないものなので」と、返す。

それでも「あまりにも無粋」と思ったので、佳子の胸をほめることにした。


「いつ見ても、芸術品のような形と大きさ」

「こうして触れていると、幸せです」


佳子は、そんな麗が面白い。

「麗様・・・もっとおもちゃにしてもかまわんです」

そうかと言って、押し付けることもしない。

あくまでも麗の指が動くままに、遊ばせている。

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