第314話麗のブログ初投稿に向けて、様々な反応。

麗としては、明日の用件が済んだと思ったので、電話を切ろうと思った。

しかし、葵は、また話題を変えた。

「あの・・・式子内親王様のブログのお話は・・・どれほどまで」

「催促するようで、誠に申し訳ないのですが」


麗は、「やはり言われたか」と思うので、正直に答える。

「ほぼ、まとまっています」

「大旦那にもお見せして、評価をいただいてから、葵様にお渡ししようかと」


その麗の言葉で、葵はさらに、心がときめく。

「うちは・・・早く読ませていただきたくてなりません」

しかし、麗は慎重。

「九条の名を冠した式子内親王様についての文、笑いものになっても困ります」

「大旦那の了承を得てからの、お渡しになります」


葵も、そこまで言われては仕方がなかった。

「わかりました、楽しみにお待ちしております」

と、電話を終えるしかなかった。


さて、葵に催促された麗は、ブログの文を少々手直ししてから、茜に連絡を取る。

「式子内親王様のブログの最初の原稿をつくりました」

「至らない点があれば、茜さん、五月さん、大旦那で指摘していただきたい」


茜は、本当にうれしそうな声。

「あら、出来たん?見せて、送って」

「はよ、見たい」


麗が、早速送ると、そのまま読んでいるらしい。

しばらく声が聞こえない。


麗が少しだけ不安になっていると、茜の声が、再び聞こえてきた。

「めちゃ、きれいな文や、さすが麗ちゃん」

「式子内親王様自身が、書かれたような文やなあ」

「葵祭当日の早朝の、新鮮で神聖な思いを詠まれたお歌やけど」

「母さんにも、大旦那にも見てもらった」

「大旦那は、何より、言葉の選び方、意味の含ませ方が、きれいやと」

「そのままでOKと、むしろ早くアップしてブログを見たいと」

「母さんは、もう何度も読み返して、ウルウルしとる」

「これでまた、式子内親王様のファンが増えると」


麗は、ようやく安堵した。

そして、茜に相談をする。

「ブログの書き手、つまりペンネームになるけれど」

「うん、九条麗にする?」


麗は、少しためらった。

しかし考えていたことを言うべきと思った。

「麗、だけにしようかと」

「それでわかる人はわかりますし」

「まあ、文としては九条家の名を汚さない程度のもの、書き手の名としては慎重にしたほうがと」


茜は、その麗の考えを否定する。

「そこまで慎重にならんでも」

「九条麗で、すでに京都では名前が通っとるし、期待も大きい」

「母さんも、大旦那も、九条麗としての文を望んどる」

「奥ゆかしさも過ぎるよ、麗ちゃん」


麗は、「これはますます責任が重い」と、不安を覚えるけれど、大旦那まで「九条麗」としての文を望む以上は、断りようがない。

「わかりました、そのまま九条麗として」と答える。


茜は、またうれしそうな声に変わった。

「それでな、麗ちゃん、土曜日の午後に理事会やろ」

「日曜日の午後は石仏の会議」


麗は「はぁ・・・そのようで」と返す。

茜の次の言葉がさっぱり読めない。


茜の声は明るい。

「日曜日の朝、下鴨神社に参拝しようかと」

「せっかく麗ちゃんの初公式ブログやし」

「式子内親王様と葵祭に、感謝の気持ちをと」


麗は、ここでも「それは・・・そうですね」と、断りようがない。

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