第305話麗と佳子 高輪での一夜、そして朝

「麗様、美味しゅうございました」

佳子は、麗の上で、まだ身動きができない。

美しい胸には汗がしたたり、呼吸も荒い。


麗も懸命に呼吸を整えようとするけれど、なかなか難しい。

とにかく、風呂で洗われている間、そしてベッドの上で、「佳子になされるがまま」になってしまった。

ただ、それも佳子が「今日はどうしても麗様を責めたい」と言ってきたため。

麗としては、それで佳子が喜ぶのなら、と思い身体を委ねてしまった。

その後は、佳子の責めに耐えるのが精一杯のまま、絶頂となった。


佳子は、胸の上下がおさまり、ようやく麗の上から横に身体を動かした。

「はぁ・・・ふふ・・・責めちゃいました」

「麗様も、いいお顔で」


麗は、顔のことを言われると恥ずかしい。

「こんな無愛想な顔が?」

途端に佳子は両手で麗の顔を包みこむ。

「可愛らしい・・・でも、危なくなった時の顔は・・・ふふ・・・」

麗は、答えようがない。

佳子は麗を抱く。

「いろいろ、お疲れの様子がありましたので、お気をつかわせないようにと」

「今日は、それもありましたので、私から」

麗は、「いつも佳子さんのほうから」と思うけれど、答えない。

胸にあたる佳子の胸が、とにかく心地よい。

言葉を出す以上に、その心地よさに、身を委ねていたかった。


佳子は、ますます密着させてくる。

「うちも、初めての都内で」

「こんな立派な家で、麗様と二人で」

「はぁ・・・どうしたらいいかと・・・不安で」


麗も、佳子を強めに抱く。

「これで安心します?」


佳子は目を閉じた。

そして、また声が震えた。

「今度は・・・麗様・・・うちを・・・めちゃくちゃにしてください」



全てが終わり、麗も佳子も動けない。

佳子は、息が荒い。

「はぁ・・・すごい・・・完敗です」

麗は、身体の芯から疲れを感じる。

「佳子さん、このまま寝ましょう」

佳子はうれしそうな顔。

「はい、麗様・・・離しません」



翌朝、麗が目を覚ますと、ほぼ同時に佳子も目を開ける。

佳子は、裸のまま、立ち上がる。

「お食事にします、関東風に挑戦です」


麗が見ていると、佳子はお尻を隠す。

「お尻には自信ありません」

「少し大き過ぎるかなと」


麗は、言葉が上手に見つからない。

「いや、見とれてしまうような、お尻」

自分で言っておいて、「何とも下手だ」と思うけれど、今さら仕方がない。


佳子はプッとふいた。

「麗様は、お胸派?お尻派?」


麗は焦り、懸命に考えた。

「いや、佳子さん、天使のような、美少女のような」

「全てが、芸術品です」


すると佳子の全身が、また赤く染まった。

窓から差し込む、五月の陽光を受けて、さらにその美しさを増している。



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