第172話麗の「お世話係兼秘書係受け入れ」情報とそれぞれ

麗の「お世話係兼秘書係受け入れ」の情報は、茜から吉祥寺の香苗や桃香にも伝えられた。


「麗ちゃん、相当渋っておったけど、説得したよ」

香苗も、安心した。

「うちも店がありますし、やりきれなくて申し訳ありません」

「それに、桃香じゃ大騒ぎするだけ、妥当と思います」

「後は人選ですね」


しかし、桃香は落胆。

「妾にもお世話係にもなれん」

「一緒に暮らして嫁さんになる?ありえん」

「それ以前に、フラれてるし」

「もう、うちの顔なんて見てもくれんやろな」

「雲の上の人に戻ってしもうた」


また鎌倉の香料店の瞳と美里には、五月から同じことを連絡。


瞳も納得。

「それが一番と思います」

「なにせ、痩せ過ぎで、可哀想なくらいで心配になりました」

「どんなお世話係を選ぶのか楽しみ」

「少しでも子供の頃のような明るい麗ちゃんを見たい」


美里は、実にやりきれない。

「桃香に先を取られて、取り返そうと思った矢先に」

「また別の上流の女?しかも麗ちゃんが選ぶ?」

「そんなことしたくないくせに・・・面倒なくせに」

「幼馴染の私だって、素っ気ないほど女なんてどうでもいいくせに」

「でも、桃香に負けたままも、気に入らない」

「何とか、思いを遂げたい、難しいけれど、チャンスもないなあ」


蘭は、母奈々子から、「お世話係」の話を伝えられた。

そして、ひどく動揺。

「お世話係って・・・マジ?」

「・・・嫁さんじゃないよね・・・」

「でも、お世話係で同じ部屋に・・・麗ちゃんと、どこかの綺麗なお嬢様と?」

「桃ちゃんでも美里ちゃんでも・・・無理か・・・」

「私は・・・子供過ぎて、論外か」


そんな蘭の動揺を、奈々子は諫める。

「仕方ないよ、麗様は、もう九条様」

「すでにご関係筋と、立派な面会をして、信頼と期待を得ているの」

「大旦那も五月さんも茜さんも、大満足」

「おそらく早くに一緒に面会した関係筋のお嬢様から、おそらくお嫁さんが決まると思うけれど」

「スムーズにいけば婚約までは進むかな」

「でも、それまで、健康管理をしないと困る」

「麗ちゃんは、食が細い、細過ぎるから」

「せめて、食べさせる人がいないと、倒れられたら、みんなが困る」

「それはわかるよね、蘭」


蘭は麗の気持を思った。

「麗ちゃん、本当はすごく困っている」

「人を寄せ付けたくない性格だし」

「でも、麗ちゃんを深く知ると、寄り付きたくなる」

「やはりお世話係も避けられないかな」

「仕方ないね、麗ちゃん、そういう立場だもの」


奈々子は、その顔が落ち着いている。

「蘭、麗ちゃんは、ひどい食生活でなくても、お世話係は付けられたと思うよ」

「九条麗様だもの、健康管理から身だしなみまで、間違いは許されないの」

「それに九条財団の一員としての仕事も始まるの」


蘭も、それ以上は何も言うことが出来なかった。

それ以上に、麗が「どんなお世話係」を選ぶのかのほうが、実は気になっている。

「上手にお世話係のお姉さんと仲良しになって、麗ちゃんとも仲良く話したい」

「だから、早く東京に出て、麗ちゃんと同じアパートに住みたい」

「だって、麗兄ちゃんも言っていたもの、遊びに来いって」


蘭は、そこまで思った時、心にようやく明るさが戻っている。



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