第162話麗の面談相手と麗の今後の仕事 麗は葉子に言葉をかける。

茜は麗の口から食べたいものが、出たので安心したらしい。

ようやく明日からの面談者情報の話に移る。


「午前と午後で一組くらいずつ」

「ご親戚衆の中で主だった面々がほとんどやけど」

「九条家の関係する銀行の頭取さん」

「今は大旦那が経営する学園の理事たちと学園長さん」

「文化財団の理事たち、これは早速仕事にもつながる」

「不動産会社の専務、大旦那が経営者やからNO2」

「とりあえず連休中の関係者はこれだけにしとく」


麗は聞き返す。

「ということは連休を終えたら?」

茜は即答。

「まあ、寺社関係もある」

「葵祭もあるから、その後にゆっくり」


麗は頷く。

「それは当たり前、まず忙しいと思う」


茜は、麗の顔をじっと見る。

「その中で、最初に言ったご親戚衆の中には、娘さんを連れて来る場合もある」

麗は、何故、それを言うのかわからない。

「娘を連れて来る理由は?」

茜は即答。

「言うまでもない、麗ちゃんのお嫁さん候補や」

「だから、しっかり見極めんと」

麗は、当惑する。

「それは・・・いきなり過ぎるのでは?」

「まだ、大学一年生、それも一か月程度」

「就職もしていない」


茜は首を横に振る。

「いや、就職は決まっとる」

「まずは、九条の文化財団、それは当たり前」

「それから、麗ちゃん、麗ちゃんは労働者にはなれん」

「九条家の後継というか、次期当主や、だから経営者」

「もちろん、そのための教育は大旦那から」


麗はここまで聞いて、改めて自分が背負う責務の重さを強く感じる。

「うかつに九条家に入るなどと言って、とんでもないことに巻き込まれてしまった」

「しかし、それ以外に選択のしようがなかったのも事実」

「何しろここが、実家だったのだから」


考え込む麗の手を、茜が握った。

「心配はし過ぎてもあかんよ」

「面談には一緒する」

「大旦那もうちの母さんも、うちも含めてな」


麗と茜が「面談者情報」を見始めると、部屋のドアにノック音。

茜がドアを開けると葉子だった。

「クッキーと紅茶をお持ちしました」


麗は椅子から立ち上がった。

「葉子さん、昨日は、ご厚意をありがとう」

「気にしないでいいよ」

「僕には何の悪気もない」


葉子は、顔を赤らめて、クッキーと紅茶を持ち、部屋の中に入って来る。

「いえ・・・こちらこそ・・・」

「いきなりで、ごめんなさい」


麗は、葉子の赤らんだ顔を見る。

いわゆる派手な軽い女の顔ではない。

少なくとも、中学や高校、大学ですれ違う軽薄で着飾り、話題も空疎な女の顔ではないと思う。


麗は葉子の出身地を思い出した。

「いつか奈良を教えて欲しいのですが」


葉子の顔がパッと輝いた。

「はい!麗様!ご案内いたします!」


その二人の様子を見て、茜は興味深く思う反面、一抹の不安を感じている。

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