第139話鎌倉香料店の瞳と美里 麗は京都駅に到着

鎌倉の香料店にも、茜から麗の九条家に戻る旨のメッセージが届いた。


瞳は冷静に頷く。

「そうか、来るべき時が来たんや」

美里は不安。

「せっかく麗ちゃんに再会したのに」


「余計な期待はするもんやない」

「桃香ちゃんも、それを思い知らされたみたいや、麗ちゃんに」


美里は首を横に振る。

「桃香ちゃんは、もともと無理」

「香苗さんの姪ってだけでしょ?」

「しかも元気だけが取り柄」


瞳は、美里を叱る。

「やめとき、美里、苦労するだけや」

「それは桃ちゃんと比べれば、美里は物を考える」

「でもな、京の女の世界は、そんな甘いもんやない」

「京都に生まれて育っとらんと、地下も地下、ゴミ虫やで」

「そもそも、京都の中でも、格付けは絶対や、崩すことはならん」

「下手をすれば、簡単に殺されるで」


美里は苦し気な顔。

「いいとこ、お妾さん?」

「桃香でもそうだよね」


瞳は美里のお尻を軽く叩く。

「すぐには京都に住まんやろ、事件もあったし」

「まあ、都内にいる間は、逢えることは逢える」

「逢いたいんやろ?せめて」


美里は素直に頷く。


「奈々子さんも蘭ちゃんも東京に来るみたいや」

「それを口実に、麗ちゃんに逢ったら?」


美里の顔に、ようやく落ち着きが戻った。

「うん・・・どうしても麗ちゃんに逢う」


その美里の耳に、瞳がささやく。

「どうやら、桃ちゃんは・・・麗ちゃんを押し倒したみたいやで」


瞳の表情が変わった。

「マジに許せない、私も負けない」



麗と九条の大旦那、茜は京都駅に到着した。

改札口には、麗も見覚えがある執事の鷹司が立って待っている。


その執事の鷹司が、麗を見るなり、深く頭を下げた。

「麗様、お待ちしておりました」

「九条家の御屋敷一同、首を長くして」


麗は、また困惑する。

今まで見て来た鷹司執事は、雲の上の人。

麗が頭を下げても、鷹司執事は軽く頷くだけだったから。


茜が鷹司執事に指示。

「まだ寒い時期や」

「風邪でもひかれたら一大事や、行きましょ」


その指示で鷹司執事は全ての荷物を持ち、京都駅を進む。


麗は思った。

「立場でこれほど変わる?」

「大の男が、こんな俺みたいな大学一年生にペコペコして頭を下げ」

「それが京都人の世界か、身分や立場が全てか」

「人としての実力も実績も関係ないのか」


その麗の顔は、少しずつ沈み込んでいく。

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