第119話茜とその母五月

茜は、その母、五月と向かい合っている。

「全て、計画通りに進んどる」


五月

「うちはお妾さんやから、同じ屋敷で、ずっと日陰者やったけど、恵理はもう立ち上がれん」

「うちに向かって、妾の分際で出しゃばるなとか、よくもまあ、あれやこれやと・・・恵理は自分から籍を抜いておきながら、居座ってやりたい放題」

「うちも、余計なことを言わんと、黙っとった」

「そしたら、とうとう調子に乗って自分からボロを出した」

「世間知らずの旧宮家のお嬢様?そんなん今の日本かて通用しない、それを海外ですれば、コロリと悪党に騙される」


「もう、お家の財団とかの全ての役を取られたんや、金も入ってこない」

五月

「もう知らんわ、あんな人」

「あの屋敷も壊して建て替える、汚らわしい犯罪者の家なんて、九条のお屋敷にはいらん」

「どうでもいい私物はご実家に送り返すか、ゴミ捨てポイや」


「それは、犯罪者とは住めんな、家族でなし」

五月

「あれほど威張って、うちらを苛めて、ええ気味や」

「恵理の役は、全部うちがもらう」

「亭主で次期当主の予定だった兼弘さんは、死んだけれど、ほんまの正妻はうちやった」

「もともと、細かな事務は母さんやろ?原稿書きから何から」

五月

「今度は麗ちゃんに任せるかな、ほんま文はきれいに書くしな」

「書道も上手やったなあ」

「何とか、明日説得したいなあ」

「素直に来てくれればなあと」

五月

「奈々子さんと蘭ちゃんのこともあるしな」

「暴力父の宗雄も、元は極道か半ぐれか、まあ意気地がないからチンピラや」

「それが、九条の圧力で国家公務員や」

「ロクな仕事もせんと、威張るだけは威張る」

「酔って帰って、毎日、麗ちゃんを折檻や」

「結局、チンピラはチンピラの程度を抜けられん」

「奈々子さんも、ちょうど上手く縁が切れたんや」

「二人のゴクツブシと」


「吉祥寺の香苗さんが、麗ちゃんのアパートに奈々子さんと蘭ちゃんを入れたら、どうとか言っておった」

「麗ちゃんを、京都に戻してからでもええけど」

五月

「うーん・・・それが正解やね、それと・・・」

「それとって?」

五月

「そのアパートを買い取ってもいいかな」

「財団の名義でもええな、麗ちゃんを管理者にして」

「何しろ恵理の退職金は没収やし、貴金属も財団名義、売り払えばいい」

「余計な給料も支払わんから、金が浮く」

「犯罪事実が発覚して、名誉を棄損した場合は、そうするいう役員の規約や」


「それを明日言ったほうが?」

五月

「まずは大旦那との養子縁組、それは絶対に納得させないと」

「そうしないと、財団も何も、ゴチャゴチャになる」

「その後がええな、順を踏んで」

「麗ちゃんは地味やけど、受けた仕事は、キチンとこなす」

「ピアノも上手やったなあ」

五月

「うちも聞きたいなあ、次期当主のショパン」

「問題は、食欲かな、、桃香ちゃんも香苗さんも、ガリガリって」

五月

「茜、あんた、お姉さんやから、それは頼むで」

「麗ちゃんの健康は、うちらの将来にも直結する」


茜と五月の話は、夜遅くまで続いていた。

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