第115話警察署にて「事実」の提示、結は失神。

警察署の取り調べ室で、結はガタガタと震えが止まらない。


女性の警察官の尋問は実に厳しい。

「まず、九条様のお屋敷にて、使用人などに対する度重なる暴行、暴言」

「これについては被害者から通報、被害届がありました」

「これが、傷の跡、先ほど、私が被害者の同意を得て、撮影を行いました」

「酷いものですね、まずは脚、背中、胸、腕、脳天まで」

「鼓膜が破れていた人も」

「あ・・・反論は出来ません、九条屋敷の監視カメラに全て、映っていて」

「提供も受けました」

「その暴行行為を行っているのは、あなたと、母親の恵理」

「尚、恵理については、イタリアのフィレンツェにて、麻薬所持などの罪で逮捕拘束されているけれど」

「まあ、とにかく、この暴行は、あなたがしていることには間違いないですね」


女性の警察官は、下を向く結に、さらに尋問。

「それから、無銭飲食の通報がありました」


結は、顔をあげた。

「え・・・それは・・・ある時ばかりの催促なしって・・・店の人が・・・」

必死に抗弁をする。


女性の警察官は、首を横に振る。

「いやいや、そんなことは、被害者は言っていません」

「九条のお屋敷に集金に来いって、怒鳴って帰って・・・」

「それで集金に行ったら、門前払いが何度も」

「店に行った覚えがないとか?このお屋敷に金を取りに来るなど100年早いとか?どうも・・・あなたの声のような感じで」

「このように店内の動画も、九条のお屋敷前の動画もありますよ」

「総額で・・・300万以上ですよね?」

「まあ、私のような庶民では入れないようなお店ばかりで」


結は必死な顔。

「どうして、大旦那に言ってくれなかったの?」


女性の警察官は、ますます表情が厳しい。

「同じ敷地内ですが、別棟でしょ?」

「それに、すでに成人しているではないですか」

「まず請求するのは、あなたになりますよ、当たり前ではないですか」

「大旦那様に請求しろなど、何故あなたが指図するのですか?」

「あなたが利用した飲食でしょう?」

「どうして知らんぷりが出来るのですか?」


うろたえて、再び下を向く結に、女性の警察官が追い打ち。

「無銭飲食ばかりではないでしょう?」

「宝石店、洋服店、バッグ、着物・・・全て持って帰って支払いをしない」


結は、震えながらも、女性の警察官に尋ねた。

何とか、追求の話題を変えたかった。

「あの・・・どうして、母も私も、母の旧姓で?」

「何かの間違いでは?」


女性の警察官は、呆れたような顔。

「知らなかったんですか?」

「貴方のお父さんが亡くなった時点で、籍が旧姓に戻っています」

「届け出は、貴方の母」

「通称で、九条の姓を名乗っていただけでは?」

「まあ、貴方は車の免許もないし」

「それ以外に身分証明書・・・保険証とか・・・しっかり見たことがないのでは?」


結は、また全身の力が抜けた。

「そんなの、全部使用人任せやった・・・」

「車なんて運転することもなく、医者かて全て往診や」

「支払いから何から、全て・・・人任せや」

「学生証・・・あれは大旦那の経営の学園やから・・・どうでも問題にはならんかったのか・・・・見たこともないし」


女性の警察官が、また厳しい表情。

「あなたがたは、法的には、九条様とは無関係」

「居座っただけと、九条様はおっしゃっていました」


そして真っ青となった結に、留めを刺した。

「それと・・・戸籍を調べたら、実は九条様とも、亡くなったお父様とも、あなた・・・血縁はありませんよ、ご存知ですよね」


結は、あまりのショックで気を失ってしまった。








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