第114話結の逮捕

京都九条家のお屋敷では、結が激怒となっている。

何しろ、突然屋敷の使用人に、自分の部屋の入り口の格子戸に外から鍵をかけられてしまったのだから。


「誰や!誰の指図や!」


鍵をかけにきた使用人は、日頃気に入らないことがあれば、平手打ちや足蹴は当然、煙草の火を押し付けたことも数え切れないくらいの、結から見れば「下郎」の身分。

しかし、その「下郎」は、結に頭を下げるどころか、鼻で笑う。


「何や、その口の利き方は」

「知らんのか?どんくさいやっちゃ」


結はまた激怒する。

「何やて?誰に口を利いてると思っとるんや!」

「この下郎!ゴミ虫!」


「下郎」は、また鼻で笑う。

「まあ、さえずりなされ、今にわかる」

「後は・・・知らん」

そして、そのまま姿を消してしまった。


部屋の出入り口に鍵をかけらてれてしまい、出ることもできない結は、呆然となる。

「こんなんじゃ、トイレにも入けん」

「誰の指示や・・・」

「大旦那?まさか・・・孫やで?」

「孫娘の部屋に鍵をかけるんか?」


「下郎」が言ったことを思い出す。

「知らんのかとは・・・何や・・・」

「どんくさい?下郎に何でそんなことを?」

「今にわかる?」

「後は知らんって・・・あれがうちに対する言葉づかいか?」

「あーーーわからん・・・」



結は、激怒しようが大声を出そうが、誰も来ないには、どうしようもない。

仕方がないので、部屋のテレビをつける。

ちょうど、ニュースを流している。


アナウンサーが、読み上げた。

「イタリアのフィレンツェで日本人男女二人が、麻薬所持等で逮捕」

「男は沢田宗雄、50歳、文部科学省職員」

結の目が大きく開いた。

「え・・・麗の親父?何で?」

しかし、その次の瞬間、結は腰から崩れ落ちた。

「女は、黒田恵理、51歳、無職」

「詳しい経緯は不明」


結は、ワナワナと震えた。

そして大混乱となる。

「マジに母さんや・・・サングラスはしとる」

「でも黒田?旧姓?・・・どういうことや・・・」

「何故、九条でない?」


大混乱となる結に、足音が聞こえてきた。

音からして、二人、女のようだ。

結は叫んだ。

「誰や!何様のつもりや!閉じ込めおって!」


その叫び声に呼応して、女性の声が聞こえてきた。

「公称九条結、本名黒田結、お尋ねしたいことがあるので、警察までご同行願います」

崩れ落ちたままの結の耳に、「カチャリ」と鍵の回る音。


入ってきたのは女性警察官一人と、茜。

結はフラフラになりながらも、茜に怒鳴った。

「何や!茜!ゴミ虫の分際で!」

「うちの部屋に勝手に入ってくるとは、何事や!」


茜は笑顔、結の顎を、人差し指でスッとなでた。

「それくらいにしとき、ぜーんぶ、ばらしたる」


結は、茜の微笑みの中、涙を流しながら力なく連行されていった。

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