第76話麗の危険な個性 香苗は一時転居を勧める。

桃香は、不安気に女将香苗を見た。

「ねえ、どうする?」


女将香苗は冷静。

「全て録画してあるから、ここのお店には問題が発生しない」

「もちろん、麗君に何の罪もない」

「むしろ、三井さんが自暴自棄になって、何かをしでかす可能性がある」


桃香

「あそこまで狂気になれるものかな、理解できない」


女将香苗は、首を横に振る。

「いや・・・麗君は、それを誘発する何かがあるのかもしれない」

「今の三井さんもそう、九条のお家の恵理さんと結さん」

「傷つけるにしろ、求めるにしろね」


桃香は、ドキッとした。

「うん、恥ずかしいけれど、メチャクチャに抱きたくなったし、抱かれたくなった」

「そういう不思議さも感じる」


女将香苗

「麗君は、人を避ける、避けたがる」

「自衛本能かもしれない」

「でも、知れば知るほど、そのままには出来ないタイプ」

「知れば知るほど、欲しくなる」

「罪作りなお人や・・・」


桃香は、まだ不安。

「ねえ、麗君に連絡した方が?」


女将香苗は難しい顔。

「住所までは教えなかったけれど、三井さんがうろついて発見するかもね」

「その時に刃物を持っていると・・・」

「それから、桃香」


桃香は、女将香苗の厳しい顔を見た。


女将香苗

「当分、麗君のアパートには行かないほうがいい」

「車でも、歩きでも」


桃香は、悔しそうな顔。

「そうか、車を覚えられていて、私の顔もか、見かけられたら・・・ストーカーになるか」

「でもそうすると、麗ちゃんには?」


女将香苗は、スマホを手にした。

「うちが連絡するわ、どこかに避難したほうがいい」

桃香は、その話を聞こうと、耳をそばだてる。


女将香苗

「麗君、お久しぶり・・・夜分、遅くごめんね」

麗は、麻央と佐保に抱きつかれていたけれど、スマホを取るのは早かった。

「はい、こちらこそ、御無沙汰しております」

「おかまいなく・・・何でしょうか」

女将香苗

「突然で悪いんだけど、さっき店に三井さんって女の人が来て」

「はい・・・」

三井という名前が聞こえたらしい、麻央も目を開く。

女将香苗の声が低くなった。

「麗君の住所を聞きに来たの、教えなかったけれど」

「問題は、夜の9時過ぎに酔っぱらって店に来て、しかもカバンの中に出刃包丁」

「近いところに住んでいるから、見つかったら何をされるか、わからないの」

麗は、困った。

「というと・・・引っ越しとか?でも・・・僕が追い出されるような」

女将香苗

「何かがあってからでは遅いの、身を守って欲しいの」

「警察には言ったほうが?」

女将香苗

「まず、対処してくれない、麗君が何らかの傷害を受けない限り」

「つまり、何かがあってからになる、血を見てからとか」

麗の困惑は、ますます深まっている。

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