第46話麗が京都を嫌う理由 桃香はアマゾネスになる

「だから、京都は、好きになれない」

麗は、自分でも大きな声と思ったけれど、止められない。


「誰と誰が本家と分家とか」

「頭を下げる作法とか、食事の作法も、いろんな作法も」

「他人に気を使ってばかり」

「気配りとか、いろいろ言って、要は細かな足の引っ張り合いをしているだけ」

「物事の本質の前に、手順がどうのこうの、あらさがしばかりをして、何も前に進まない」


桃香は、驚いたような顔。

「麗ちゃん、そんなこと・・・言うんか?」

「嫌いでどうするんや」

「みんな期待しとる」

「裏切れんよ、麗ちゃん」


麗は機嫌が悪くなった。

「京都を裏切るとか、何とか・・・」

「あれは母さんの実家ってことだけ」

「僕が京都で生まれたとか、育ったってことではないもの」

「東海地方のド田舎だよ、生まれたのも、育ったのも」

「それこそ、京都の人が、上から目線で馬鹿にする田舎者だよ」

「それなのに、そんな僕を京都の人が何で期待するの?」

「裏切る以前の話、どうでもいい田舎者だ」


文句を言いだした麗に、桃香はしっかり密着。

そして、手は麗の手をそっと包む。

「麗ちゃん、言い過ぎた」

「ごめん、そんな怒らんで」


「うちな・・・」

桃香の手の力が強くなる。


「麗ちゃんを好きなんや」

「麗ちゃんが何を言っても、どんなんだっても好きや」

「宿縁と思うとる、絶対離さん」


「妻であれば、一番・・・」

桃香の声が湿った。

「妻でなくても・・・妾でも、麗ちゃんから離れとうない」

「それは、わかって欲しい」




その後、しばらくして、桃香は麗から身体を離した。

桃香は正気に戻ったのか、恥ずかしそう。

「麗ちゃん、身体の相性がいいみたいや」

「うちも初めてやったけれど、こんなに・・・何度も・・・」

「うちの身体は、麗ちゃん依存症になりそうや」


麗は、まだ虚脱状態。

顔も目も、ボンヤリしている。


桃香は、そんな麗を笑う。

「これから食事にするよ」

「麗ちゃんに栄養補給や」

「その結果を、また・・・いただく・・・」


麗は、何も返す言葉が出ない。


桃香の料理は実に手早かった。

昨晩、料亭から持って来た料理もあったけれど、その他にもスープや肉野菜炒めをサッと作る。

麗は、ほぼ強引に叱られながら、食べさせられた。

桃香は、麗の食事量に満足し、笑顔でアパートから去っていった。

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