第2話

ーー数刻後ーー


「私たち姉妹で決闘を行いましょう」

「立会人はフルシュでいいですよね?」

「いやいや!血迷ったか!?」


家に帰ると早速気が抜けなくなる。

突っ込みをして、気分を誤魔化したいが憂鬱な気分は晴れない。


「いえ、私たちは至って正常ですわ」

「速く選んで下さい」

「そ、それは選んでも選ばれなかった方に殺されるんだろ?」


後ろから当たるナイフをずらそうとするが、無力な俺には出来ないようだ。


「私が一生あなたをお守りいたしますわ」

「私が守るので姉様は不要です」

「遠くへ逃げてしまえば追うことなど出来ないですわよ?」

「選ばれた時に殺してしまえば問題ありません」

「け、ケンカは止めろ!そんな唯一無二の双子同士でなんで殺しあいするんだ!」


胸に溜まるモヤモヤ。

腹が立つ…。ムカムカする。

なんで俺ごときで…争うんだ!


「それほど貴方が大事なのですわ」

「フルシュの為なら何だってします」


こいつらは分かってない!俺の苦しみを!


「俺みたいなやつは何処にでもいる!

なのになんでその俺の為に唯一無二の家族を殺すんだ!」


胸が痛い。


「俺がそんなお前らを選びたい訳がなうだろ!」

「…。ではどうですか?貴方の為に育てたEカップです」

「メイドから性技を習得しました。

フルシュは…お兄様…どうですか?」


体に当たる柔らかい感触。いつもは興奮するはず。

でも余計ムカムカした。


「なんで俺に執着する!

俺を思うなら俺を苦しめるなよ!

選ぶなんて出来ねぇよ!」

「じゃあこの国の法を変えれば…」

「姉様、ここは結託しま…」

「なんでいつも極端なんだよ!

そうやって力に頼ってばっかりで!」


視界が滲む。俺だって力が欲しい。力で解決したい。


「お前らは殺してでしか解決出来ない!そんなの!

進む道になにかあったら全部殺して行くのか!?」

「えぇ、貴方の為ならば。何だって呪い殺しますわ」

「はい、当然のことです」


姉妹が何てことないように言う。

俺には…こいつらが人に見えない…。


「なぁ、それって普通の事なのか?

俺が弱いだけで…強いやつは皆そうなのか?」


自信がなくなる…。昨日迫ってきたあの日から…こいつらが分からない。


「分かりませんわ。でも私は貴方の為ならば何だって殺しますわ。

それはダーナも同じですわ」

「えぇ、姉様と同じです」


分からない…。得たいの知れないこいつらが怖い…。


「さぁ、選んで下さいな?」

「そうです。お兄様?」

「……」


誰かを頼りたい…。教えて欲しい…。

頭に浮かんだのは…あの薄い笑みだった。


「1週間!1週間待ってくれ!」


気づけば叫んでいた。


「その間に俺に接触したら絶対に選ばない!

1週間この家から出る!その…時間をくれ」


そんなのを許すわけがない。でも、その垂れ下がる細い細い糸にすがった。


「いいですわよ。その間に貴方を満足させられるようになりますわ」

「えぇ、ゆっくりと考えて下さいね」


そう聞いた瞬間、体は動き出した。

天国だ。自由だ。そう思った。

同時1週間後に居座る今日よりもひどい状況は知らないふりをした。


学院に近いこの家から向かう先は第2研究室。


走りながら零れる涙を拭った。


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