5/5 人を致して人に致されず(訳:皆様のご期待に添えず申し訳有りませんでした)
すっかり日も落ちてしまった。
いや、今日一日はとても楽しかったのだけど。
今更この子を追い出すわけにもいかないし、本当に追い出したら間違いなく路頭に迷うだろう。
それも寝覚めが悪い。
今夜は家に泊めるより他ないだろう。
ていうかクッションと毛布を並べて私のベッドの下で寝る気満々だ。
めっちゃ楽しそうに寝床作りしている。
「ん? どうした」
「手際が良いなぁって」
「魔力の確保には良質な睡眠からというではないか」
「初耳だ」
「惰眠を貪るための手間は惜しまぬ!」
「健康のためなら死んでもいい理論みたいね」
「ふっかふかーっ! モッフモフー!」
のけぞりながらクッションの上に飛び乗る。
「こらっ、下の階の迷惑になるからやめなさい。そもそもまだお風呂にも――はっ」
しまった。
あえて考えないようにしていたのに、つい口に出してしまった。
そう。
お風呂。
そりゃああるよねこのイベント。
むしろ無いほうが不自然だもの。
いくらレオが猫だからって、見た目は完全に男子高校生だもの。
大丈夫? これR指定とか何も入ってないけど大丈夫!?
平常心平常心、深呼吸深「入らないぞ」
そう、この子は入らな――え?
「え?」
「安心しろ、ずぶ濡れだった髪も乾いたし、多少の汚れくらい平気だ。なんなら一生風呂に入らなくても構わん」
そっかー。
この子お風呂嫌いだったもんねー。
「ああ、なぁんだ、心配して損したー」
「あっはっはっ」
「良いわけ無いだろこの野郎、風呂入るぞ」
「ああっ、やめて! 顔が濡れたら力が出ないのっ!」
「アンパンマンか!」
羞恥心なんて最初だけ。
こういうのは勢いで何事も乗り切れるのだ。
結論から言うと、皆様が期待するようなことなど起きませんでした。
そもそもウチのレオ、去勢してました。
「へー、私のパジャマの大きさでも丁度いいわね」
男物の服なんて持っていないので、代わりに寝間着を用意した。
私も小柄な方だと思うのだが、レオも劣らず華奢である。
高校生というより、中学生とした方が適切だったのかもしれない。
しかし、そう認めてしまうと私がただのショタコンになってしまいかねないので絶対にレオは男子高校生であると断言する。
高校生でもアウト?
アーアー聞こえない。
「……」
あれ?
ちょっとぶすっとしている。
流石に花柄はまずかったかな。
「全身から漂ってくる
あ、私が嫌がったことはしないように気をつけてくれてるんだ。
可哀そうだけど、許可したら相当変態的な光景になりそうだから我慢してね。
もちろん加虐趣味は無い。
「もう寝るよー」
就寝時間になったので、電気を消す。
「怖っ!」
「?」
レオの目だけが暗闇の中で光っていた。
「おやすみなさい」
ああ、なんだかんだで今日は楽しかった。
程よく疲れ、とても心地よく眠れそうだ。
もぞもぞ。
もぞもぞ。
「……ちょっと」
目の前に光る目が二つ。
「い、いやなに、深く暗き闇の渦に
「本音は?」
「人恋しいから隙あらば布団に潜り込もうとした」
「なんだー、そういうことかー。まー人恋しい夜もあるわねー」
「さすが
「いいわけあるかっ!」
「ちょっとだけ! 先っちょだけでも!」
「だから誤解を生む言い方はやめいっ!」
最終的に枕を生贄に捧げることで決着しました。
そういえばよく枕の上に乗ってたなぁって、真夜中に感傷的になってしまった。
眠れなかったのは私の方だ。
「――ん……」
目が覚めたとき、そこはいつもどおりの朝でした。
「レオ?」
彼の姿はどこにも有りません。
昨日の出来事は全て夢?
私の妄想?
実は凄くストレスを抱えていたとか?
急に不安になってきた。
泣きそうになっている自分が居た。
「――おおっ。起きたのか、
違った。
夢なんかじゃ、無かった。
「? どうして泣いているのだ?」
「ううん。なんでもない」
「ふう。それにしても朝の運動というのは気持ちの良いものだ」
「ああもうこんな時間。会社に行く準備――って、え?」
「
「よくわかんないけど……私は仕事に行かなきゃいけないから、ここで大人しくしてなさいね」
「ふむ。
「はいはい。まあ、そんな感じ」
私はレオと入れ替わるように奥へと向かう。
「ぎゃあぁぁ!! トイレットペーパーがぁぁぁ!!!」
退屈しない日々が始まりそうです。
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