少女剣士は護衛する美男役者を全力で撒く所存である

はじ湖

第1話 旅のひとこま

 俺の視線のすぐ先で、剣士の少女は急に立ち止まった。


花海はなみくん……」

「? 何だよ、時地ときち

「そろそろボクは花海くんをいてもいい気がするんだ」

「……」


 え、待って。何?

 人の言葉を理解するのにこんなに時間がかかったことはない。

 え? 俺を、撒く?

 え? 待って、そんなの……


「……いいわけねえだろ!! 何で旅の連れを撒くんだよ!」

「だって一人旅のほうが気楽じゃん」

「何をしみじみと言い出してるの? 俺ブロークンハートっ! それに俺がいなきゃこれ、ただの時地の旅行じゃん。時地報酬もらえないじゃん」

「ああ、そうだった。護衛の旅か。忘れてた」


 そのまま少女は何事もなかったように再び前を向いて歩いていく。


 ちょ、ちょっと待てい。


 護衛対象である俺を撒こうなんて、今のは本気で言ったのだろうか。だとしたら泣くしかないが。

 この人は目が常にマジだから分からない。


 少女――俺の用心棒・時地ときちは気にした様子もなく、ぽてぽて前を歩いていく。

 何というかもう……。……もう。



 俺はこの護衛の少女が分からない。

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