第2話ぽっぽ君とこーちゃんの出会い。

「こーちゃん。今日も来ないのかな?」


その日は雨が降っていた。ありとあらゆる罵声が書かれたダンボールに、恐らく彼女自身による下手な字で『捨てないでください!』という走り書きがあった。「こーちゃん。好きだよ!」「大好きだよ。」彼女はダンボールの中から、来る日も来る日も僕を待っていた。来る日も来る日も。


僕は疲労のあまり気を失った彼女のために傘をかけた。彼女を担いで家に帰った後のことはあまり覚えていない。



彼女は僕に物乞いをするように、身体を擦り付ける。来る日も来る日も、僕がいついなくなるのか、泣いて、ただ待っている。僕の帰りを。ある日から耐えられないのか、大学の研究室へ向かう僕のことをこっそりとつけてくるようになった。彼女は僕の研究室前で、いなくならないで、いなくならないでと泣いている。扉に身体をこすりつける。ふっさりとした彼女──小さなひよこの毛が、いつも僕の研究室の扉の前で落ちている。僕が怒ったふりをして扉を開けると、ごめんなさいごめんなさいと泣いて謝る。彼女は贈り物をする。美味しい焼きたてのマドレーヌなどのお菓子や、ポテトクロック(ジャガイモに含まれているリン酸が亜鉛と反応することで亜鉛原子から電子が銅板に移動し、電流が発生する仕組みとなっている。)など。僕は喜ぶが捨てるふりをする。それでも彼女は贈り物をやめない。彼女は大人になれない。ただ待ちわびている。僕の愛を。

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