短編詰め合わせ

限前零

わんこ君1

?:(此所は……何処だろう。俺はたしか…誰もいない廃病院に居たはず。待合室で一休みしていたのだが…いつの間に移動したんだ?)


(彼は身体を起こすと辺りを見渡した。部屋の奥に人間が居ることを確認したが……)


?:(俺を寝床に寝かせたのは彼奴か?何者だ……)


(人影は此方に気付いたようだ、そのまま近寄ってきた。)


人間:目が、覚めましたか?あんな所で寝ていると風邪引きますよ。


(彼は何も答えず寝床から降りたが、身体に力が入らず座り込んでしまった…)


人間:ほら、言ってるそばから…酷い熱があるんですから動き回っては危ないですよ。

それとも…此処が何処か分からないから、寝ていられませんか?


……先程貴方が休んでいた待合室の隣です。目が覚めればそのまま診ようと思ってたので…


?:(つまり……俺はまだ病院に?何故人間が……しかも"診る"だと?医者は……許さない!)


…うぉおおおおん!(敵…倒す……!)


人間:……!?突然どうしたのですか!落ち着いてください……


(彼は手近にあった棒を掴むと人間に向かって振り下ろした。どうやらただの棒ではなく刀が仕込まれていたらしい、鞘が外れ刀身が露になる)


?:………!?(……刃物……!?)


(刃物が苦手なのか、刀を手放すと突進で強行突破を試みた。だがあっさり阻止されてしまう。)


人間:……この獲物は私のです。返してくれてありがとうございます。

(人間は刀を鞘に納めると腰に仕舞った)


?:がるる……!(離せ人間!さもなくば……!)


院長:おやおや…騒がしいと思ったら。顔真っ赤な割には元気そーじゃない!


人間:し、師匠……呑気なこと言わないで下さい!突然錯乱状態で…


院長:んもう…人間用の薬しかないけど許してよ、わんこ君?効かなかったらごめんだけど。


(何かの薬を打たれ彼はそのまま気絶してしまった)


人間:あの、今のはどういう意味で………?彼は人間では…


院長:んー?僕の見立てが正しいなら彼、人間じゃないよ。


院長:……ん。これ読んどきな。

(何かの研究ファイルを渡す)


人間:……人造………人狼……?


院長:じゃ、わんこ君見ててあげなよ。……気になるんだろう?


人間:あ……はい……(このファイルは……人体実験?)

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