苦手な注射2
乙梨:………あのねぇ…のどが痛くって…暑い。揺れるから……動けにゃいんだ……
一ノ瀬:(……びっくりするほど天野君の話と一致する。揺れるってのは多分、熱からくる目眩だろう…)
寝てる間に、身体を診させてもらったよ。結論から言うと……熱風邪を引いてるの。普通の風邪に比べて、熱が高いから…身体が揺れたような感じがするの。
喉も腫れてるから他の病気も疑ったけど、検査したら大丈夫だったよ。ちゃんと薬を飲んで、ゆっくり寝たら治るよ。
乙梨:………はーい。
一ノ瀬:………んで、一つ乙梨君に選んでもらおうかな。
(心なしか意地悪そうな笑みを浮かべている)
乙梨:………なあに?
一ノ瀬:注射と点滴、どっちがいい?すぐ終わるか……時間が掛かるかの違いだけど。
(乙梨は注射が嫌いなので得体の知れない点滴、と言おうとしたが…時間が掛かると聞き、散々悩んでいる)
………ぶっちゃけ言うとさ、どっちも痛いのは最初だけだよ?針を刺すのは変わらないんだから。ちなみに選べないなら無条件で注射だよ。すぐ済むし。
(乙梨は涙目になっているがとうとう答えを出せなかった)
乙梨:うう……痛いのやだよ……雨龍、抱っこして…………怖いよ………
一ノ瀬:………?ちょっと待って。それ、どういう状態なのかな。
乙梨:あのね………学校の予防注射が怖くて、せんせーに抱っこしてもらってたの………
一ノ瀬:(……ってことは、そのまま強行しても打てないくらい、暴れられたのかな?さすがにそれは危ないか……)
………そう。ちなみにその時、天野君は側にいた?
乙梨:………うん。
一ノ瀬:ふむ、なら呼んでくるよ。無理やりすると危ないし、どんな体勢だったか見てみたいから。
(少しして、呆れ顔の天野を引き連れた一ノ瀬が戻ってきた。まさか自分が、同じ事をする羽目になるとは夢にも思わなかったのだ)
天野:………身体、起こせるか?ほれ、俺が支えててやっから……左向いてろ。
乙梨:………うん、ありがと。
(抱っこが効いたのか、それとも直視しなかったのが効いたのか……注射はあっさり済んだ)
一ノ瀬:………ね、それって…抱っこしなくてもさ、顔だけよそを向いてたら良いんじゃないの?
天野:あー……確か最初はそうしようと言ってたんですけど、力みすぎて針が刺せないのか抜けないのか……
よく分からないんですが看護師さんの指示で強制的に抱っこになりました。
一ノ瀬:そうか………多分、針を抜いた瞬間、血が吹き出したかもね。
天野:………それって、ダメなんですか?
一ノ瀬:ダメだよ。万が一短い時間で一気に流血したら……貧血で倒れたり色々あるのさ。
だから力を抜いて、とかその類いの指示には絶対従って欲しい。些細なことだけど、大事故と隣り合わせだからね。
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