古の記録
限前零
苦手な注射1
天野:………おーい、朝だぞ。そろそろ起きろよ……(悠人の寝起きの悪さは筋金入りだからな……)
乙梨:やだぁ………もっとねるの………
天野:頼むから起きろって。もう10時過ぎてんだぞ……(嘘だろ、もうかれこれ一時間は格闘してるのか…)
乙梨:……………雨龍のいけずぅ………
天野:(………いけずって言われた……)
乙梨:ね、お水ちょーだい…のど渇いたの………(げほげほ…)
(乙梨は喉が痛むのか、軽く咳き込んでいる。天野はようやく……乙梨の体調が優れないことに気付く)
天野:あ、ああ……大丈夫か?(まさか、万年風の子な悠人が……風邪?)
(乙梨は寝そべったまま、なんとか水を飲む。どうやら身体を起こすのすらままならないようだ)
乙梨:暑いし寒い……ゆらゆら……揺れるよ…うふふ………
天野:………ちょ、ちょっと待ってろ。誰か医者を呼んでくるから!
(乙梨を寝床に残したまま、天野は記憶を頼りに部屋を訪ね歩いた。)
(………ヘルムさんは……機械工学の会で居なかった。日向さんは、限前さんと大捕物中で所在不明。
卯月さんはキモナシさんと実験中で多分、しばらく手が離せない……
………う。消去法で一ノ瀬さんか…………しょうがないな…)
(マトモな医者が居なかったため、天野はしぶしぶ一ノ瀬の元を訪れた)
一ノ瀬:………?どしたの、そんな慌てて僕に用かな。
天野:一ノ瀬さん!あの……悠人の調子が悪くて………その、他に頼れそうな人も居なくて…………
一ノ瀬:落ち着いて、天野君。一緒に居ない辺り、自力じゃ動けそうにはないんだね?乙梨君の所まで案内してくれるかな。
天野:………はい!
<子供部屋に戻って>
おい、一ノ瀬さん呼んできたぞ!起きてるか、悠人………
(ベッドで寝ていたはずの乙梨は、コップを持ったまま机に突っ伏していた)
一ノ瀬:あらら。こんな分かりやすく行き倒れるかなぁ……
(見かねた一ノ瀬に抱き抱えられたが、ぐったりしたまま動かない。どうやら天野が席を外している間に、さらに熱が上がったようだ)
天野:………嘘だろ。いつの間に、顔があんな真っ赤になったんだ?
一ノ瀬:うーん………とりあえず僕の部屋に戻ろうか。この様子じゃ問診できないからさ、天野君……ちょっと手伝ってよ。
天野:………え、俺が?(手伝うったって………)
一ノ瀬:大丈夫。質問に知りうる限りで答えてくれれば良いからさ。
<一ノ瀬の研究所>
さて……乙梨君、いつから調子が悪そうだったの?
天野:………えっと…気付いたのは朝だった。元々悠人は寝起きが悪いけど今日に限って……一時間以上経っても起きてくれなくてさ。
一ノ瀬:まさか、毎日乙梨君の事起こしてるの?
天野:起こさなかったら、学校に行く日でも昼過ぎまで寝るから……
一ノ瀬:お兄ちゃんみたいだね、天野君。ちなみに他、どこが調子悪いとか言ってた?
天野:………よく言われます。咳き込んでた以外、特に何も言ってません。暑いし寒いとは言ってたんですが…。(意味がわからないけど…)
一ノ瀬:熱が出てたらそうなるのよ。寒気がするけど身体は暑いからね……地味にしんどいんだよ?
天野:………そうなんですか。俺、あんまり熱が出た事って無いから…知りませんでした。
一ノ瀬:そうだね、病弱だからといって……しょっちゅう熱出して寝込んでるのとは本質的に違うもんね。
(………主訴が少ないな。多分風邪だと思うけど……)
ん、ありがと。後は僕が引き受けるよ、天野君は戻っていいからね。
天野:はい、悠人の事をお願いします。
<一時間後>
乙梨:………ゆらゆら揺れる……ね………雨龍はどこ…?
一ノ瀬:やぁ、目が覚めたみたいだね。どう、具合は?
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