十三日目 後
「何者だ!?」
私が声を発するより先に王子がレクシスを睨み付ける。
「能無しに要はないので黙っていてください」
「んんんっ!?」
レクシスがぱちんと指を鳴らすと王子の口が開かなくなってしまった。
慌てた王子は口許に手をあてモゴモゴしている。
「どうして……魔王レクシスは続編の攻略キャラなのになんでここにいるの……?もしかして特別ルートでもあった?」
王子の横ではミリアがぶつぶつ呟いているがレクシスの眼中には無いようだ。
「私と一緒に行きましょう。こんなところで命を散らすより私に攫われた方がお得ですよ」
レクシスがそう言いながら手を差し出すと、縛られていた両腕の縄がはらりととけた。
心が揺らぐ。
先程まで強い自分を保っていられたのにこの魔王の言葉は容易く私の心を溶かしてくれる。
「アザレア、どうか私と共に」
優しい声に視界が揺らいだ。
気が付けば私はレクシスの手を取っていた。
「……あなたと行きます。レクシス」
そう告げると彼は今まで見た中で一番嬉しそうに笑ってくれた。
「色好いお返事が聞けて嬉しいです」
レクシスが私の手を引くとふわりと足が宙に浮く。
体験したことのない浮遊感に思わずレクシスの腕にしがみつくと彼はふにゃりと締まりのない笑顔を浮かべる。
「さて、ではアザレアを魔界にご招待致しましょう……あぁ、そうだ。その前に」
レクシスは何かを思い出したかの様に振り返りミリアに視線を向ける。
「あなたのお陰で私は愛しい人を連れ帰ることができます。お礼にあなたの使っていた魔法全てを解除して差し上げましょう」
「……!!や、やめて!!」
ミリアが仮面の下の瞳を大きく見開いている。
「大丈夫ですよ、皆さんの記憶はしっかりと残しておきますから」
「やめて!!この力がなくなったら私はヒロインじゃなくなっちゃう!そんなの嫌なの!お願いやめて!!」
ミリアの必死の静止など気にもとめず、レクシスはぱちりと指を鳴らした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます