九日目

「人間には悪い輩が居るものですねぇ。この新聞によると先日とある学校の教師が生徒に手を出した罪で懲戒免職されたそうですよ」


「……魔族の世界にも新聞があるんですね」


「もちろん。情報は時に武器になりますからね」


「それよりいつまでここに来るつもりですか」


「アザレアが私の求婚に頷いてくれるまでです」


「そんな日は来ません」


「と言いながら私がプレゼントしたドレス着てるじゃないですか」


「こ、これは……暖かいので着ているだけです」


「そうだとしても充分です。やはり私の見立ては間違いありませんでした。デザインも色もあなたによく似合っている」


「……それは、どうも」


「……!今の、今のもう一回お願いします!ほんのり頬を赤らめながらも照れてこちらを直視することができずうつむき加減にお礼を言う仕草をもう一回!!記録魔法で残します!」


「絶対やりません」


「お願いします!照れながらもその瞳には愛しさを宿し、言葉にしたいのにプライドが邪魔をして口に出せないもどかしさを溜めながらも意を決してようやく言葉にのせた私への愛の言葉を是非もう一度!」


「自分の都合のいいように置き換えないでください」


「きっちり網膜に焼き付けますからもう一度!」


「しつこい!」


魔王はなかなか諦めない。

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