Life is gravity

或海穂入

Life is gravity

 生きているってことは「重い」そう思ったのはいつだったか。

いつの間にか俺の背には重力がのしかかっている。ひたすら重い。

何をやっても、その重さのせいで動きが緩慢で、人並み以下のことしか出来ない。

周りを見ると、みんな無重力みたいに飛び回っていて楽しそう。

それとも俺が地面に埋まっているせいで、目線が低くそう思えるだけか。

 

 今まであまりに成功体験に乏しく、褒められた記憶はありません。

叱られたばかり、怒られたばかりの記憶ばかりです。

何をやっても上手くいかない。泥沼を掻き分け、掻き分け底に沈んでいく。

そこは底なし沼でした。


 最初の頃は、何とかその重力に反発しようとしたけど、無駄でした。

最初は背筋を伸ばしていられない。次は顔を上に向けていられない。最後は布団に横になるしかない。

重力なんてものはさ、どうしようもないものなんだよ。

世界の法則なんだ。俺にはどうにもできないんだ。

ウィキペディアから引用すると、重力ってのは、

《地球上で物体が地面に近寄っていく現象や、それを引き起こすとされる「力」を呼ぶための呼称。人々が日々、物を持った時に感じているいわゆる「重さ」を作り出す原因のこと。》らしい。

その「重さ」を作り出す原因、それが、地球か、はたまた自分の内かの違いだけで。


生きているだけで、なんでこんなに辛いんだろうな。

生きているだけで、罪を犯している気持ちになる。

生きているだけで、罰せられている気持ちになる。

生きているだけで、責められている気持ちになる。


どうして他のみんなは、この重さを感じていないんだろう。

それとも感じていながら、笑っていられるのか。

それなら、どうして平気な顔して生きているのかな。

人っていうのは、人から承認されなければ生きていくことなんか出来ない。

それは皆分かっていると思う。

なら、その承認はどうやって得られるのか。

どんな出会いも、どんな創作物も、どんな言葉も、どんな人生すらも

決して俺を認めて、承認して、変えてはくれないだろう。

人生というのは、ただのたんぱく質の電気信号の連なりなだけで、

そこに過去も、未来も、現在も無い。

そんなものがどう足掻こうが、人っていうのは行き着くところにしか行かないものだ。

俺の終着駅がここまでだったという話。

「まもなく、俺の人生終点です。お出口、乗り換えはございません」なんてな。


トントントン

学校の階段を上る。


ガラガラガラ

屋上の扉を開ける。


カシャカシャカシャ

フェンスを跨ぐ。


「人生がこんなに重いってのなら、最後は実際に重力に身を任せてみるかな」

屋上の端から一歩を踏み出す。


「あ~あ、俺の人生なんも意味なかったな~」


そして、落ちて―――落ちて―――落ちた。



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