三十路女の葛藤と非現実な鍾乳洞は突然に
さて、昨日の夜は、みっともなく泣いてた訳だが、次の朝、清々しく目覚める事ができた…もう、俺の中でライナは大きな存在だ…、だがしかし…、このままでもいられない…。
ライナが家に住み始めて1週間…
日が経つのは、あっという間で…
出来れば、ずっとここにいればいいのにな…、
そう思いながらライナを見る…。
ライナは窓をじっと、どこか思い詰めている様子だ…。故郷の事を思っているのかな…?
まぁそうだよな…、
ライナにもここでは無い世界に…、帰る家がある…。
それを俺の都合でここにいつまでも居させられない…。
休暇も残り少ないし…、これを機会に海岸以外にも連れて行きたいな…。
そう思って、ライナに声を掛ける
「なぁ…?他に行きたい所とか無いか…?」
そう言うとライナは
「他にですか…?」
続けて
「じゃあ"鍾乳洞"とやらに行きたいですっ!」
「鍾乳洞…?」
俺がそう聞き返すと
「この世界の神秘が鍾乳洞と言う場所にあるらしくて♪」
「ふむ…、俺も興味あるし…、行くか!」
そう言って
どこの鍾乳洞にしようか、スマホで調べると…、興味深いネットニュースが飛び込む…『富士山近くに異変!?』
とデカい見出しと共に富士山の写真がデカデカと掲載されている。
ふむ…。富士山の近くにも鍾乳洞はあったよな…?
俺の中の非日常アラートが鳴り響く…、富士山近くの鍾乳洞には何かある!!
そう思いライナに行く予定の鍾乳洞を教える。
するとライナは…「行きましょう!!」
と、眼を輝かせながら行く気満々だ。
「いや…、提案しといてなんだけど…危険かもしれないぞ…?」
そう言うとライナは嬉しそうに
「今更でしょう?♪」
まぁ…、そうだけども…。
前々から思ったが…、ライナは冒険好きなのか…?
そうして1日が過ぎた朝…、いつものように起き。
遠出用のリュックに最低限の荷物を詰め込み、そして海岸で拾った雷光刀を携え。
当然、エメラも連れて行く。
昨日の、お出かけで味を占めたかもしれないので今回は、お留守番って訳ににもいかない…。
因みにライナの許可は取った。
もうライナも、エメラとも一緒じゃないと冒険じゃないらしい…。
デートとは一体…。
まぁ…俺自身エメラを連れて行くのに反対する理由も無いしな。
そして玄関の扉を開けて上空を飛び回るグリフォンを呼び、背に乗って飛び立つ。
「いざっ!鍾乳洞へ!!目的地は富士山っ!!」
そう言って富士山に向けて空路を進む。
「しかし、鍾乳洞に行くのに何故、富士山何です?」
俺の背中にしがみつくライナがそう質問する。
因みに海岸デート以来余程気に入ったのか今回もあの肌色のワンピースを着ている。
他の動き易いのを勧めたが、ライナはどうしても、これがいいと、譲らない…、だから、せめて靴だけは運動靴を履かせた。
まぁ俺もワイシャツに長ズボンと傍から見たらオシャレのカケラもない
簡素な普段着だが…。
「お、見えて来た!」
目の前に富士山らしき大きな山が見えて来ると、背中に背負った刀の鞘が強く輝く!
「えっ!これって!」
ライナがそれを見て静かに言う
「あの山…何か居ます…」
「魔物か…?」
俺はそう聞き返す。
するとライナは
「恐らくは…」
ここであのネットニュースの記事の見出しを思い出す…。
『富士山近くに異変!?』
と言う見出しだ、鍾乳洞とライナの事でいっぱいだったので詳しくは分からないが。
要は魔物達があの富士山を根城にしてる訳だ…、鞘が光ると言う事は恐らく魔物達もこっちの存在に気が付いた筈…今更、ルート変更は受け付け無いだろう…。
ならこのまま飛んで行くしかない。
そうして魔物達の襲撃を警戒しつつ鍾乳洞前に降り立った…。
その瞬間、鞘の輝きが一層強くなり。
鍾乳洞から他の観光客達のと思われる、人々の悲鳴が聞こえる…。
「ライナ鍾乳洞の神秘に取り付かれるな…?」
そう言って鍾乳洞に入る俺達…。
だが中には神秘に引き寄せられた、コウモリのような魔物達が飛び回り他の観光客を襲っている…こりゃあのんびり、観光なんかしてる場合じゃないっ!
助けないとっ!!
「やめろおぉぉ!!」
「待って!未知っ!!」
俺はライナの静止を聞かず我先に飛び出し観光客に襲っている魔物に向かって背中の雷光刀を抜き、その魔物に切り掛かる。
「さぁ、落ちついて外へ!」
俺が魔物達を討伐している間、ライナは長剣を片手に他の観光客達を外へと誘導する。
そんな時、ライナと同じくらいの歳の女性が鍾乳洞の奥を指さし、取り乱した様子でライナに声を掛ける。
「あのっ!!!弟が、ヒロキがまだ、あの奥にっ!!」
その発言に驚くライナ
「何ですって!?分かったわ!弟さんは私達が必ず助けるから貴女は先に逃げて!」
そう言ってライナは女性の肩を叩き、先に逃げるよう、言った。
そうして俺達はあらかた魔物達を討伐し、襲われた観光客を外へと見送り、観光客達は逃げるように鍾乳洞から走り、その姿が見えなくなるまで見届ける
「よし、じゃあ逃げ遅れたっていう弟さんを探しに行こう」
そう言ってライナを連れて鍾乳洞の奥へと歩みだす…
ピチョン…ピチョン…
雫の垂れる音が辺りに響く…。
妙に静かだ…。
「おーいっ!!ヒロキ君ーっ!!」
俺達は弟さんの名前を呼びながら鍾乳洞の奥へ奥へと足を進める…、
だが呼び声はこだまするだけで返事は返ってこない…
これは最悪の想定をせざる得ないか…?
そんな時ライナが不安げに俺に話す
「も、もしかしてあの魔物達に食べられてしまったのでしょうか…?」
「どうだろうな…?もしくは、魔物達に追い詰められて声の届かない穴に落ちたとかな…?」
そう言うとライナが慌てふためく
「あわわっ!!じゃあ急いで助けないとっ!!」
「落ち着けっ!下手に騒いで魔物達を刺激する方が危ないぞ!?」
そう言ってライナを落ち着かせる。
「取り敢えず魔物はあれで全部な筈はない…その証拠に背中の鞘は光を放ち続けている…」
そう言って雷光刀の鞘をライナに見せる。
そうして鍾乳洞の奥へと進む事30分
奥の岩影に小さな人影が動いているのを発見した
「ヒロキ君か…?」
俺は、恐る恐るその人影に話し掛ける…、すると
「誰…?姉ちゃん達…」
おずおずとその小さな影は岩影から姿を現す。
「俺達は君を助けに来た」
俺はそう言って左手を差し出す。
その瞬間、
コウモリの魔物が天井から急襲した、が俺はソレを右手に握った雷光刀で一閃する。
するとそれを見てた男の子は暫くボー然として、
次の瞬間、眼を輝かせて俺に詰め寄る…。
「カッケーっ!!??姉ちゃんってサムライの子孫なの!?」
「いや、そういうのじゃあ…」
と言い訳しようとしたらライナが割って入り
「そうよ〜?このおねーさんは君を助けに来た英雄さんなのよ〜♪」
「えいゆう…!!」
「おいっ…⁉」
ツッコもうとしたが小さな男の子の喜びに溢れた顔見て…ツッコむ気も失せた。
はぁ…。
小さい子供の夢は壊すものじゃないしな…。
心の奥でため息を吐きながら男の子をあの女性の元へと送り届け、
そして再び魔物の巣窟と化した鍾乳洞に入る。
もう観光客達は全員避難しただろうし
これでのんびりとこの常識の通じない非現実な鍾乳洞を散策する事できるな…。
しかし…今までの常識が通じない世界となっても鍾乳洞というのはいつでも神秘に溢れているものだ…。
ライナは感嘆の声を漏らしながら鍾乳洞の中を隅々まで見て回る
途中コウモリの魔物がちょいちょい襲ってくるがそれは俺が率先して雷光刀で羽虫を切り捨てるようにしている。
だって、ライナにはできるだけ楽しんで貰いたいんだもん…!
するとライナが
「あの…、私に気を遣っているなら結構ですよ?私は魔物を討伐しながらでも観光できますから…!」
そう言うならいいけども…。
要らん心配し過ぎかな…?
そうしてまた30分が経ち…、あらかた散策は終えたかな…?
と思った、その時、壁の一部が崩れ去り、新たな道が現れた!
「隠し通路…!?」
「ワクワクしますねっ!?♪」
ライナはワクワクが止まらない様子…。
俺はというとライナとは対照的に呆れ、笑いが止まらない…、
とことん非現実な鍾乳洞だよ…ww
と隠し通路を通っているとライナが一言「宝箱とか落ちてませんかね!?♪♪」
「逆に宝箱が落ちてたら恐いから、俺は罠を警戒するな〜…」
まあ楽しんでいるようで俺は何よりだよ…w
そうしてあらかた隠し通路もあらかた見回り、
最後にこの鍾乳洞の魔物達を二人で手分けして一掃し、帰ったのだった…。
因みにあの隠し通路も隅々まで散策したが宝箱は1個も落ちて無かった。
「うう…悔しいです…」
「まぁ、そう上手い話は無いってこったな!」
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