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第1353話 妙な弁明をしたら受け入れられました
第1353話 妙な弁明をしたら受け入れられました
「そうです、そういえばタクミさんが男性の意見というのを、聞いて下さっているのでした。どうだったんですか?」
「えっと……」
クレアは、俺が聞いた話に興味を持ち、さっきまで寝ていたとは思えない程目を輝かせている。
もしかして、クレアもユートさんだけじゃなく男性の意見を聞きたいとかだろうか?
参考にするくらいならいいと思うけど、参考になるような話ってあったかなぁ? なんて思い出しながら、昨夜の話を始めた。
「成る程、髪ですか……」
「確かに男性からの視線を感じる事は多々ありましたが……そちらですか」
「盲点でした、体の一部を凝視するという男性は多いと聞いていましたし、実際にそういう事は多かったのですが」
冷たい目だの、ルグレッタさんの資質だのというユートさんのあれな趣味は置いておいて……フィリップさんとユートさんの意見が合った、髪の毛に焦点を当ててルグレッタさんに伝えた。
というより、途中からクレアもライラさんも、興味津々に聞いていたので三人に伝えたって事になるか。
三人共、男性からの視線を受ける事もあると納得してくれたわけだけど、ルグレッタさんだけは予想外と言った反応でもある。
あまり意識していなかった部分なんだろう。
「えっと……変な意味では捉えないで欲しいですけど、その……特に意識しなくてもですね、動的な物を目が追い掛けてしまうというか……早い話が、動いている物に対して勝手に目が行ってしまうんです」
具体的には、豊かな胸部とか。
ルグレッタさんが体の一部と言った事で、ライラさんがちょっと気にしている視線の動きをしたから、弁明はしておきたい。
やましい気持ちがある人も中にはいるだろうけど、そんな気が一切なかったとしても、どうしても目がそちらに行く事だってあるんだ……と伝えたかった。
それは髪も同じ事なんだけど……やっぱり本能なのかなんなのか、視線の行き先はどうしても豊かな方に行ってしまうのはいかんともしがたい。
そういった視線に気付くという人もいれば、よくわからないという人もいるけど、一応全てが悪いわけじゃないと言いたかったんだ。
……だからって見られても我慢して欲しいとか、そんな事を言うつもりは一切ないが。
「動いている物に……成る程、それはよくわかります。動く物は常に警戒しておかないと、何があるかわかりませんから。場合によっては、盛った女性がそこに仕込んでいる事もありますから。それが本物なのか盛っているのかを判断するためにも、よく見て確認せねばなりません」
「そうですね、体という事に限らなくても魔物が襲ってきているなど、動く物に対しては目を向けなければいけませんから。それだけタクミさんは、周囲をよく見ているという事でしょう」
「……お二人の言う事ももっともですが……まぁ、何も言いません。ですが女性であっても、つい目が行く事はあります。ですのでタクミ様はあまりお気になさらず」
おや、意外とすんなり受け入れてくれた? というか、俺が思っていたよりも別の意味で捉えられているような気がしなくもない。
ルグレッタさんが話しているのは、暗器を仕込んでいるとかそういう事か……護衛でもあるから、暗殺を警戒しなきゃいけないわけだ。
クレアが言うのは、屋敷や家の外で魔物が襲って来る可能性の話しか。
まぁそれも気を付けなきゃけない事でもあるよな、うん……早期発見できれば、こちらを目指して来ていても逃げる事だってできるだろうし。
ライラさんは……あ、こっちは俺が言った意味をそのままちゃんと解釈しているな。
でも、女性でも同じような事があるのか。
とりあえず、気にするなと言われても失礼のないくらいに留めるよう、注意しようと思った。
ちなみに後で聞いた話だけど、ルグレッタさんの言う盛ったというのは、早い話が胸に暗器を隠しておいてただ大きいだけと見せかけたりする場合の事や、盛る事で小さな武器を仕込めるようにした場合らしい。
貴族のお屋敷やお城などでは要人警護の観点から、当然だけど武器の携帯を厳しく取り締まる事が多く、身体の一部を使って隠して……という事が過去に何度もあったらしい、怖い。
以前、採用した従業員さん達を屋敷に招いた時も、俺の知らない所でそういった確認は大まかにされていたのだとか。
大まかなのは、顔合わせなどをしていた事、レオがいる事、前もって怪しい人物でないか候補者としてリストにする時点で、ある程度は調べていたからだとか。
そうだよなぁ……銃刀法なんてものはなく、それでなくても魔法があって刀剣はお金を出せば誰でも買える場所だ、警戒してしかるべきだよな。
「それにしても髪ですか……あまり意識した事はありませんね。むしろ、邪魔だと思う事の方が多いです。いっそ、バッサリ切ろうと思ったりもしますね」
「長いと大変ですよね。洗った後も、中々乾きませんし……そのままベッドに横になると、濡れて冷たくなってしまいますから」
「伸ばす伸ばさないは自由ですが、やはり体の一部ですから。切るのも躊躇われます」
思わぬところ……ではないか、ともかく女子トークが始まってしまって肩身が狭い。
とにかく、俺からすると長ければ長い程大変な事が多いんだなぁ、という感想。
俺はある程度伸びたら切って楽な長さに調整するくらいだし、風呂で洗うのは当然だけどこれといったこだわりの手入れなんていうのはしていない。
男でも化粧する人がいるように、大事にしてしっかり手入れする人はいるみたいだけど……あと、薄くならないようにとか。
「クレア様やライラさんは、とても艶が出ていて気を使って手入れをされているのがよくわかります。ですが私はあまり……護衛として戦う事もありますので、やっぱり邪魔だと思ってしまいます」
「ルグレッタさんも、十分艶やかだと思いますよ?」
「いえ、外で野営をする事も多いので、これがあまり……街や村で宿を取った時には、手入れをするので今はまだいいのですが、あと数日もすると……」
「あぁ、外にいる事が多かったら大変ですよね。土や砂以外にも、ルグレッタさんは魔物からの返り血とか……」
「そうなんです。べったりと付いた時にはもう……すぐにでも川に飛び込みたいくらいで。それでも取れない事が多いのですけどね」
「私はほとんど経験はありませんが、森に行った際しばらく野営している時は、やっぱり大変でした……あら、どうされましたかタクミさん? 窓の外を見ていますけど……何か外に?」
「いや、何もないんだけどね……なんとなく、話しに入れなくて……」
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